STAGE 06 / 6-1 ネットワーク運用

QoSの基礎

考えてみよう

1本の回線を、Web閲覧・ファイルダウンロード・ビデオ通話が同時に使っているとします。回線が混雑してきたとき、全部の通信を平等に扱ってよいでしょうか?

ファイルのダウンロードは多少遅れても困りませんが、ビデオ通話の音声が途切れ途切れになると会話が成立しません。「平等」と「公平」は同じではない、という視点で考えてみてください。

混雑した道路の「優先レーン」

高速道路に緊急車両専用のレーンがあるように、ネットワークの回線にも「優先して通す通信」を決める仕組みがあります。これがQoS(Quality of Service)です。回線の帯域には限りがあるため、混雑時にどの通信を優先するかをあらかじめ決めておく必要があります。

QoSの考え方は、大きく「分類とマーキング」「キューイング」「ポリシングとシェーピング」の3段階に分けて理解すると整理しやすくなります。

分類とマーキング:荷物に優先度の札を付ける

まず、通信をその種類(音声、動画、通常のデータなど)ごとに分類(classification)します。そのうえで、パケットに優先度を示す「札」を付けるのがマーキング(marking)です。

IPパケットのヘッダーには、優先度を示すフィールドとしてDSCP(Differentiated Services Code Point)が使われます。DSCPの値によって、途中の機器が「これは優先すべき通信だ」と判断できるようになります。

音声通話(VoIP)のようにリアルタイム性が重要で、遅延・ジッター(遅延のばらつき)・パケットロスに敏感な通信には、EF(Expedited Forwarding)というDSCPの値が割り当てられるのが一般的です。EFは「最優先で、寄り道させずに転送する」という意味合いを持つマーキングだと覚えておきましょう。

キューイング:順番待ちの列を分ける

分類・マーキングされたパケットは、出口のインターフェースで送信を待つ間、キュー(queue)という順番待ちの列に並びます。キューイング(queuing)とは、優先度の高いパケットを別の列(キュー)に振り分け、その列を優先的に処理する仕組みです。

例えば「音声用のキュー」「動画用のキュー」「その他データ用のキュー」を分けておき、音声用のキューを最優先で処理すれば、回線が混雑していても音声通話の遅延やジッターを抑えられます。

ポリシングとシェーピング:流量そのものを制御する

QoSにはもう1つ、通信の流量そのものを制御する役割もあります。ここで登場するのがポリシング(policing)シェーピング(shaping)です。

両者はよく混同されますが、「ポリシングは捨てる(または再マーキング)、シェーピングは貯めて遅らせる」という違いを押さえておくと区別しやすくなります。

確認問題

音声通話(VoIP)のトラフィックに割り当てるDSCPの値として、CCNAで代表的に扱われるものはどれでしょう?

答えを見る

答えは EF(Expedited Forwarding)です。音声通話は遅延やジッターに敏感なため、最優先で転送されるようマーキングされます。EFは「寄り道させずに素早く転送する」という意味合いのDSCP値です。

試験でのポイント

CCNA試験では、QoSの基本的な流れである「分類とマーキング → キューイング → ポリシング/シェーピング」の役割分担がよく問われます。特に、ポリシングとシェーピングの違い(ポリシングは超過分を破棄、シェーピングは超過分をバッファリングして遅延させる)を取り違えるひっかけが定番です。また、音声トラフィックに割り当てられる代表的なDSCP値がEFであること、DSCPがパケットのどこに書き込まれる情報かも押さえておきましょう。「QoSは回線を太くする技術ではなく、限られた帯域の中で優先順位を付ける技術である」という前提も忘れないようにしてください。

確認問題

回線の帯域を超えたトラフィックを、破棄せずにバッファに一時的に貯めて送信タイミングを遅らせることで流量を平準化する仕組みはどちらでしょう。ポリシングとシェーピングのうち選んでください。

答えを見る

答えはシェーピング(shaping)です。ポリシングは超過分のトラフィックを破棄する(またはマーキングし直す)のに対し、シェーピングは超過分をバッファに貯めて後から送信することで、流量をなだらかにします。

ゆみちゃん
ゆみ

QoSは「優先レーンを作る」技術。分類とマーキングでまず荷物に札を付けて、キューイングで優先順位ごとの列に分けて、ポリシングとシェーピングで流量そのものを調整する。音声はEFで最優先——この流れをセットで覚えておいてね。次は仮想化とクラウド、今どきのインフラの土台を見ていくよ。