AI・自動化は日本経済を変えるのか

AI and the Economy

AIや自動化が経済をどう変えるかは、経済ニュースでもたびたび取り上げられるテーマです。期待の声と不安の声が、同じニュースの中で同時に語られることも珍しくありません。この講座はここでも、どちらか一方に断定した答えを出しません。両方の見方を並べたうえで、数字にまだ表れにくいテーマとどう付き合うかを考えます。

人手不足の国とAI

日本は、働き手の中心となる15〜64歳の生産年齢人口が、2030年に6,875万人、2040年に5,978万人、2050年に5,276万人へと減っていくという推計があります(国立社会保障・人口問題研究所)。働き手が減り続けるこの国にとって、AIやロボットによる省人化・自動化は、限られた人数でこれまでと同じ、あるいはそれ以上の価値を生み出すための、有力な道の一つだと期待されています。

背景には、生産性とは何かで見たとおり、日本の時間当たり労働生産性が60.1ドル(2024年データ)で、OECD加盟38カ国中28位にとどまっているという数字もあります(日本生産性本部)。働く時間を増やすのではなく、1時間あたりに生み出す価値そのものを引き上げる手段として、AIへの期待が語られています。

仕事はなくなるのか

一方で、AIによって「自分の仕事がなくなるのではないか」という不安も、当然のように語られています。定型的な作業や、決まった手順に沿う業務ほど、AIに置き換えられやすいという見方があります。

これに対しては、仕事が丸ごと消えるのではなく、仕事の中身が変わるという見方も併せて語られます。歴史を振り返ると、機械化やIT化といった大きな技術の変化のたびに、一部の仕事は姿を消す一方で、それまでなかった新しい仕事が生まれてきました。今回のAIについても、同じことが起きるという見方と、今回は変化の速さや範囲がこれまでと違うという見方の両方が存在し、経済の専門家の間でも意見は一致していません。

数字で追いにくいものをどう見るか

ここまでの章で見てきたGDPや生産性、賃金といった指標は、いずれも役所が定期的に集計し、公表している数字でした。ところが、AIが経済にどれだけの効果をもたらしているかは、まだこうした公式統計にはっきりとは表れにくい段階にあります。企業の投資額や導入率の調査は増えてきていますが、それが実際にどれだけ生産性や賃金を押し上げたのかを、一つの数字で示すのは簡単ではありません。

だからこそ、「AIで生産性がこれだけ上がる」という推計や宣伝文句を、そのまま鵜呑みにしないという構えが大切になります。誰が、どんな前提で出した数字なのかを確かめるという、この講座で繰り返してきた読み方が、AIをめぐる情報にも同じように当てはまります。

もっと深く ― この講座自体がAIとの協働で作られているDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

筆者自身のAIとの向き合い方

筆者である私は、データサイエンティストという立場上、日々の仕事でAIを日常的に使っています。データの下ごしらえや文章の下書き、コードの確認など、作業のさまざまな場面でAIを相棒として使いながら仕事を進めています。そして、この経済基礎講座を含む本サイトの制作そのものにも、AIを活用しています。文章の構成を整えたり、事実関係を確かめたりする作業の一部を、AIと一緒に進めているのが実情です。これは何かを宣伝したくて書いているのではなく、この章で扱ってきた「AIは経済をどう変えるか」という問いが、私自身にとってもすでに日常の一部になっている、という事実を共有しておきたかったからです。

考えてみるTHINK
Q1

自分の仕事のうち、AIに任せたい部分と、人がやり続けるべきだと思う部分はどこでしょうか?

ヒント: 「定型的かどうか」以外の切り分け方もないか、考えてみましょう。

Q2

「AIで生産性が上がる」が本当に起きたかどうか、将来どの数字を見れば確かめられるでしょうか?

ヒント: 日本経済を見るための重要指標で見た指標の中に、手がかりがないか探してみましょう。

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