インフレとデフレ
Inflation and Deflationインフレとは
「値上げラッシュ」「物価高」といったニュース見出しをよく見かけます。こうした言葉とセットで語られるのがインフレです。よく聞く言葉ですが、あらためて説明できるか、少し考えてみてください。
インフレーション(インフレ。物価が広い範囲にわたって、継続的に上がり続ける状態)とは、キャベツ1個やホテル1泊だけが値上がりすることではありません。多くの商品やサービスの値段が、ある程度の期間にわたって、そろって上がり続ける状態を指します。
ここで大事なのが「継続的に」という部分です。台風で野菜の収穫が減り、キャベツだけが一時的に値上がりしても、収穫が戻れば値段も落ち着きます。これは天候による一時的な値上がりであって、インフレとは呼びません。インフレは、特定の1品目ではなく物価全体が、しかも一時的でなく続けて上がっていく現象です。
デフレとは
インフレの逆がデフレーション(デフレ。物価が広い範囲にわたって、継続的に下がり続ける状態)です。多くの商品やサービスの値段が、そろって下がり続ける状態を指します。
日本は、1990年代後半からおよそ四半世紀にわたって、物価が上がりにくい時代を経験しました。値段が下がる、あるいはほとんど動かない状態が長く続いたということです。買う側からすれば値段が上がらないのは一見ありがたいことに思えますが、この時代が「良い時代」だったとは、あまり語られません。その理由は、次の節で見ていきます。
「ゆるやか」なら悪ではない
インフレもデフレも、聞くとどちらも困った現象のように感じるかもしれません。しかし、物価が動くこと自体が問題なのではありません。問題になるのは、動きが急激であることと、値上がり・値下がりの負担が特定の人に偏ることです。
実際、日本銀行は物価が下がることではなく、物価がゆるやかに上がり続けることを目指しています。「消費者物価の前年比上昇率で2%」という物価安定目標(日本銀行が掲げる、物価の安定を測るための数値目標)を掲げているのがその表れです。ゼロやマイナスではなく、ゆるやかなプラスの物価上昇が望ましいとされているのです。
なぜ日本銀行がそう考えるのか、どうやってその目標に近づけようとしているのかは、金利の章で扱う予定です。ここではまず、「物価が上がる・下がるという現象そのものより、その速さと偏りが問題になる」という見方を持ち帰ってください。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
「節約」の話を、物価の言葉で言い直すと
お金はどのように動いているのかで、ひとりひとりの節約は合理的でも、全員が同時に節約すると経済全体の流れが細くなる、という話をしました。デフレは、この流れの細さが物価という形で表れたものだと考えると分かりやすくなります。
物価が下がり始めると、企業は売上が減り、費用を切り詰めようとします。給料が上がりにくくなり、場合によっては下がることもあります。すると家計はますます財布のひもを締め、買い控えが進みます。買い控えが進めば、企業はさらに値下げをして売ろうとします。値下げは企業の利益を減らし、また給料や雇用に響きます。
「値下げ→売上減→給料減→買い控え→さらに値下げ」というように、物価の下落と景気の冷え込みが互いを呼び込みながら下向きに進んでいく状態をデフレスパイラルと呼びます。ひとつひとつの値下げは買う側にはうれしいことでも、それが連鎖すると経済全体を弱らせてしまう、というわけです。
「物価が下がる」は、買い物をする側にとっては良いことのように見えます。何が問題なのでしょうか?
ヒント: 値下げされた商品の売上は、誰かの給料や仕入れ代金になっています。
いまの日本はインフレでしょうか、デフレでしょうか。どの数字を見れば確かめられるでしょうか?
ヒント: 物価の動きを毎月測っている統計があります。