よりよい情報社会へ
Better Information Societyサイバー犯罪とデジタルデバイド
情報社会が便利になる一方で、新しい課題も生まれています。ひとつはサイバー犯罪(コンピュータやネットワークを悪用した犯罪)です。具体的な手口や対策については、情報セキュリティの単元であらためて詳しく取り上げます。
もうひとつはデジタルデバイド(情報技術を使いこなせる人と、使いこなせない人との間に生じる格差)です。かつては「インターネットで検索ができるかどうか」が、この言葉の代表的な場面でした。いまは、生成AIを日常的に使いこなせるかどうかが、新しいデジタルデバイドの分かれ目になりつつあります。あなたの身の回りで、生成AIをふだんから使っている人は、どれくらいいるでしょうか。自分の職場や友人関係を思い浮かべながら、考えてみましょう。
データ駆動型社会
これからの社会の姿としてよく語られるのが、データ駆動型社会(データをもとに判断や行動が決まっていく社会)です。そのしくみを説明するときによく使われる考え方がサイバーフィジカルシステム(CPS、Cyber Physical System)です。
CPSは、現実の世界(フィジカル空間)で起きているさまざまな出来事をセンサーなどでデータとして集め、それをコンピュータの世界(サイバー空間)に送って分析し、そこから得られた知見や判断を、また現実の世界に返して人やモノを動かす——というひとつの循環でできています。フィジカル空間で集めたデータを、サイバー空間で意味のある情報に変換し、その情報がふたたびフィジカル空間での行動を変えていく。この行き来がぐるぐると回り続けることで、社会全体がより良い方向へ最適化されていく、というのがデータ駆動型社会の基本的な考え方です。
シンギュラリティ
シンギュラリティ(技術的特異点。AIの知能が人間の知能を超え、社会のあり方が大きく変わるとされる転換点)という言葉も、よく話題になります。専門家の間では、シンギュラリティが訪れるのは2030年から2050年の間だという予測が多く語られてきました。一方で、それよりもっと早く、直近に訪れるのではないかと指摘する専門家もいます。
シンギュラリティをいつと見るかは、専門家の間でも意見が分かれるテーマです。だからこそ、自分なりに情報を追いかけ、考え続ける姿勢が大切になります。
ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、CPSという言葉を初めて聞いた方ほど「そうだったのか」となる話です。
自動運転車の中で回っている循環
自動運転車は、車体に取り付けたセンサーで周囲の道路状況をデータ化し、そのデータをもとにAIが最適な走行判断を導き出し、その判断に従って車のハンドルやブレーキを動かします。「現実を測る(フィジカル)」→「分析して判断する(サイバー)」→「現実を動かす(フィジカル)」という一連の流れが、走行中ずっと繰り返されているのです。
工場や畑にも、同じしくみが広がっている
工場の世界でも、機械の稼働データを集めて分析し、故障の予兆を検知してから部品を交換する「予知保全」という考え方が広がっています。壊れてから直すのではなく、壊れる前に手を打つわけです。農業の分野でも、畑に設置したセンサーの土壌データをもとに、水やりや肥料の量を自動で調整する取り組みが始まっています。どちらも、CPSの循環を実際の現場に落とし込んだ例といえます。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。
講師
講師データ駆動型社会は、サイバー空間とフィジカル空間がぐるぐる回ることで社会が良くなっていく、というきれいな循環図で語られます。ただ、この講座を教えながら私がいつも思うのは、その好循環は「勝手に回るもの」ではなく、「回している人がいて初めて回るもの」だということです。今わたしたちにできることは、まず自分自身が生成AIのような新しい技術を実際に使い倒してみて、その循環の中に自分から加わっていくことだと思っています。
シンギュラリティについても、専門家の予測では2030年から2050年の間に訪れるとされていますが、私個人としては、少なくとも一人ひとりの働き方や学び方のレベルでは、その転換はもう起きていると感じています。生成AIを使いこなしている人と、まったく触れていない人とでは、できることの幅がすでに大きく変わってきているからです。