デジタルの世界へ
Going Digitalデジタル化がコミュニケーションを変えた
デジタルという言葉は、もともと指(digit)を使って数を数えることを語源としています。ものごとを、区切りのはっきりした数値として表現する考え方です。
一方、アナログは、相似物(analogy)、つまり自然現象を何かに置き換えて、似せて表現するという意味を語源としています。温度計の液面の高さで気温を表したり、時計の針の角度で時刻を表したりするように、連続的に変化するものごとを、同じく連続的に変化する別のもので表現する考え方です。
前のレッスンで見てきたコミュニケーション手段の変化も、突き詰めれば、アナログな手段からデジタルな手段への移行の歴史でもありました。デジタル化は、情報を0と1という共通の形式に変換することで、複製・伝達・検索を容易にし、コミュニケーションのあり方を大きく変えてきたのです。
考えてみましょう ― 時計で考える、デジタルとアナログの良さ
デジタル化がすべての面で優れているわけではありません。よい例が時計です。デジタル時計とアナログ時計、それぞれの強みを比べながら考えてみましょう。
デジタル時計の強み。数字がそのまま表示されるため、読み取りに変換の手間がかからず、パッと見て正確な時刻が分かります。会議の開始時刻や締切、電車の発車時刻など、秒単位で迷いたくない場面に向いています。アラーム・タイマー・ストップウォッチ・カレンダー・ワールドタイムといった機能を盛り込みやすいのも特徴で、「時間を使って行動を管理する」ことが得意です。暗い場所や運動中でも、バックライトや常時表示があれば読み取りやすく、作業現場との相性もよい時計だといえます。
アナログ時計の強み。針と円盤によって、いま時間がどれくらい進んだか、あとどれくらい残っているかを、直感的に、面積として捉えられます。この「残り時間の可視化」は、研修や会議の進行役が、参加者全員に時間の感覚を共有してもらいたいときに強みを発揮します。見た目に上品で信頼感があり、対人コミュニケーションの場に効くという側面もあります。機能が時刻表示にほぼ限られる分、通知に気を取られることが少なく、時間をゆっくりと使える点も、アナログ時計らしい強みです。
どちらが優れているというより、正確さで管理したい場面はデジタル、時間の流れを感じ取りたい場面はアナログと、場面によって向き不向きがあります。自分の身の回りにある道具について、デジタルとアナログのどちらの性質が強いか、あるいは両方の性質を併せ持っているか、考えてみてください。
デジタルとアナログ ― 正確さと、感じ取れること
時計の例からも分かるとおり、デジタルとアナログには、それぞれ異なる強みがあります。デジタルは、情報を正確に伝えられます。数値や文字として表現されるため、誰が見ても同じように読み取れ、劣化なく複製・伝達できます。一方、アナログは、状態や変化を感じ取れます。連続的な変化そのものを表現できるため、微妙なニュアンスや、時間の流れといった感覚的な情報を伝えるのに向いています。
身近なコミュニケーション手段にも、この違いは表れています。メッセージアプリの既読機能(相手がメッセージを読んだかどうかを示す表示)は、読んだか読んでいないかを0か1かで正確に伝える、デジタル的な機能です。一方、手紙は、便箋を選ぶことや、文字の筆跡、書くのにかかる時間そのものが気持ちを伝える、アナログ的な性質の強い手段だといえます。
ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、「デジタルの方がすべて優れている」と思い込んでいた方ほど、「そうだったのか」となる話です。
情報量の多さは、必ずしも伝わりやすさではない
デジタルは正確な情報を大量に伝えられますが、正確であることと、伝わりやすいことは必ずしも一致しません。研修の場でアナログ時計が好まれるのは、正確な残り時間の「数値」ではなく、残り時間の「感覚」を、参加者全員が一瞬で共有できるからです。
手紙が、いまも選ばれ続ける理由
用件を早く正確に伝えたいだけなら、メールやチャットのほうが圧倒的に優れています。それでも、お礼状や招待状に手紙が選ばれ続けるのは、便箋を選び、時間をかけて書くという「手間」そのものが、相手への気持ちとして伝わるからです。デジタルが効率化してきたのは、あくまで情報の「伝達」の部分であり、情報に込められた気持ちまでは、簡単には効率化できません。
使い分けの視点を持つ
大切なのは、デジタルとアナログのどちらか一方を選ぶことではなく、場面に応じて使い分ける視点を持つことです。正確さと速さが求められる場面ではデジタルを、気持ちや空気感を伝えたい場面ではアナログを。この視点は、次のレッスンで扱う「数値と文字のデジタル表現」を学ぶ土台にもなります。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室でよく交わされるやりとりを。
講師
講師この演習をすると、ふだん意識せずに使い分けている「時間の感じ方」に、あらためて気づく受講者の方が多くいます。デジタルとアナログ、どちらが好きかを聞くだけでも、教室の雰囲気がやわらぎます。