目的に応じたデジタル化

Digitalization

圧縮とは ― 目的に応じてデータを小さくする

写真や動画、音楽ファイルは、そのままだとデータ量が大きく、保存にも通信にも負担がかかります。そこで使われるのが圧縮(データの意味を保ったまま、容量を小さくする技術)です。圧縮には、目的によって使い分けられる2つの種類があります。

可逆圧縮は、お布団を圧縮袋に入れるようなイメージです。圧縮している間は小さくなっていますが、袋を開ければもとのお布団にちゃんと戻ります。データも同じで、圧縮したファイルを展開すれば、圧縮前とまったく同じ情報が復元されます。文字データやプログラムのコードは、1文字でも欠けると意味が変わってしまうため、可逆圧縮が使われます。画像形式のPNGも、可逆圧縮の代表例です。

一方非可逆圧縮は、リサイクルに出す空き缶のようなイメージです。缶は資源として生まれ変わりますが、もとの缶の形に戻ることはありません。データも同様に、圧縮の過程で一部の情報を削ってしまうため、元とまったく同じ状態には戻せません。画像・音声・動画のように、多少の情報が欠けても人間の目や耳では気づきにくい形式で、よく使われます。写真形式のJPEG(最大1677万色を扱えますが、透過色には対応していません)、色数を256色に抑えたGIF、音声のMP3、動画のMP4は、いずれも非可逆圧縮の代表例です。

種類特徴代表的な形式
可逆圧縮情報を削らず、完全に復元できるPNG、テキスト、プログラムコード
非可逆圧縮情報の一部を削り、完全な復元はできないJPEG、GIF、MP3、MP4

ランレングス圧縮 ― 可逆圧縮のしくみをのぞいてみる

可逆圧縮が「情報を削らずに、どうやって小さくしているのか」を体感できる、いちばんシンプルな仕組みがランレングス圧縮(同じ文字や値が連続する部分を、「文字と繰り返し回数」の組み合わせに置き換えて記録する圧縮方式)です。

考えてみましょう ― 次の20文字を、そのまま書き写す場合と、ある方法で書き換える場合とで、どちらが短くなるでしょうか。少し考えてから、続きを読んでみてください。

AAAAAAABBBCCCCCCCCDD

「Aが7個、Bが3個、Cが8個、Dが2個」という情報さえ分かれば、もとの並びは完全に復元できます。これを「7A 3B 8C 2D」と書き換えると、20文字だった情報が8文字にまで縮みます。これがランレングス圧縮です。同じ値が連続して並ぶデータほど、圧縮の効果が大きくなります。圧縮されていないBMP形式の画像を、JPEG形式に変換して保存し直すといった作業も、身近な圧縮の一例です。

考えてみましょう ― 自分のパソコンで圧縮を体験する

自分のパソコンにあるファイルを1つ選び、実際に圧縮してみましょう。Windowsなら、ファイルを右クリックして「送る」→「圧縮(zip形式)フォルダー」を選ぶだけで圧縮できます。圧縮の前後でファイルサイズがどれくらい変わったか、比べてみてください。文章ファイルと、すでにJPEG形式になっている写真など、いくつか種類の違うファイルで試してみると、ファイルの種類によって圧縮の効果がまったく違うことに気づくはずです。

もっと深く ― 写真をzip圧縮しても、ほとんど小さくならないのはなぜかDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、実際にファイルを圧縮してみた方ほど「そうだったのか」となる話です。

すでに圧縮されているデータには、圧縮の余地が少ない

JPEG形式の写真をzip形式でさらに圧縮しても、ファイルサイズはほとんど変わりません。不思議に思うかもしれませんが、これは失敗ではなく、当然の結果です。JPEGはすでに非可逆圧縮によって、人間の目に気づかれにくい情報を削り、データをぎゅっと詰め込んだ状態になっています。すでに縮められたお布団を、もう一度圧縮袋に入れようとしても、それ以上は小さくならないのと同じことです。

「同じ並びの繰り返し」が、圧縮の材料になる

ランレングス圧縮を思い出してください。あの仕組みが効果を発揮するのは、同じ値が連続して並んでいるときでした。ところが非可逆圧縮をかけたあとのデータは、規則的な繰り返しが少ない、ランダムに近い並びになっています。可逆圧縮は「繰り返しパターンを短く書き換える」ことで小さくする技術なので、繰り返しの少ないデータに対しては、ほとんど効果を発揮できないのです。

圧縮する前の形式で保存しておく意味

写真を何度も編集し直す予定があるなら、非可逆圧縮されたJPEGではなく、可逆圧縮のPNGや、圧縮していない元データで保存しておくとよいでしょう。非可逆圧縮は、保存し直すたびに情報が少しずつ削られていくため、編集と保存を繰り返すほど画質が劣化していきます。「最終的に人に見せる形」と「あとで編集し直すための形」を使い分けることが、圧縮と上手に付き合うコツです。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。

受講者
写真をZIPに固めてメールで送ったのに、全然サイズが変わらなかったんですが、失敗ですか?
講師講師
失敗じゃないですよ。それこそが、JPEGがすでに圧縮済みだという証拠なんです。可逆圧縮は、繰り返しの多いデータにしか効きません。
受講者
スクリーンショットはPNGで保存した方がいいってよく聞くんですけど、なぜですか?
講師講師
文字やアイコンのようにくっきりした境界線が多い画像は、可逆圧縮のPNGの方がきれいに残るからです。逆に写真のような色の変化がなめらかな画像は、JPEGの方が効率よく小さくできます。素材に合わせて形式を選ぶ、というわけです。
講師メモ ― 現場から

圧縮の話をすると、多くの受講者が「圧縮=何をどう圧縮しても必ず小さくなるもの」と思い込んでいることに気づかされます。実際に手元のファイルで試してもらうと、「あれ、変わらない」という驚きから、非可逆圧縮の仕組みへの理解がぐっと深まります。

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