発想法

Ideation

発想法の考え方 ― 膨らませて、描いて、まとめる

アイデアを生み出す作業には、実は決まった型があります。発想法(アイデアを生み出し、整理するための技術)は、大きく3つの段階に分けて考えると理解しやすくなります。

  1. 考えを膨らませる。思いつく限りのアイデアを、数多く出す段階です。
  2. 考えを絵や図で表現する。出したアイデアを、言葉だけでなく図にして見える形にする段階です。
  3. 広げた考えをまとめる。広げたアイデアをグループ分けし、整理していく段階です。

この3段階に対応する具体的な手法が、これから紹介するブレーンストーミング(膨らませる)・マインドマップ(絵や図で表現する)・KJ法(まとめる)です。順番に見ていきましょう。

ブレーンストーミング ― 質より量、そして批判はしない

ブレーンストーミング(複数人で自由にアイデアを出し合う会議手法)には、守るべき4つの原則があります。

  1. 質より量。アイデアの良し悪しは気にせず、とにかく数を出します。
  2. 自由に発想する。突飛なアイデア、実現できそうにないアイデアも歓迎します。
  3. 批判をしない。出されたアイデアをその場で否定しません。批判は、アイデアが出るのを止めてしまいます。
  4. 他人の意見に便乗して、発展させる。誰かのアイデアに乗っかって、さらに膨らませていきます。

この4原則さえ守れば、ブレーンストーミングは道具も要りません。テーマをひとつ決めて、思いつくままに言葉を出していくだけです。試しに、次のお題で考えてみましょう。

考えてみましょう。「宝くじで10億円が当たったら、何に使いますか?」思いつく使いみちを、良し悪しを気にせず、できるだけたくさん書き出してみてください。旅行、投資、家、寄付……突飛なものも構いません。

たくさん出し終えたら、最後にもうひと手間加えます。出したアイデアの中から、今すぐ実現できないものを消してみましょう。そして、残ったものについて「それは本当に自分に必要か」も考えてみてください。量を出す段階と、絞り込む段階を分けるのが、ブレーンストーミングをうまく使うコツです。

KJ法 ― 出したアイデアをグループにまとめる

ブレーンストーミングで数多く出したアイデアは、そのままでは散らかった状態です。ここで使うのがKJ法(アイデアを書き出したカードを、内容の近いものどうしでグループ化して整理する手法)です。

やり方はシンプルです。出したアイデアを1枚ずつのカード(付箋でもかまいません)に書き出し、机の上に並べます。そのうえで、内容が近いもの、関連しているものどうしを近くに集めて、グループを作っていきます。グループができたら、それぞれに短い見出しを付けます。バラバラに出たアイデアの中から、共通する考え方や見落としていた論点が浮かび上がってくるのが、この作業のおもしろいところです。

グルーピングに正解はありません。同じカードの束でも、まとめる人によってできあがるグループは変わります。大切なのは、正しい分類を当てることではなく、散らばった考えの中に、自分なりのつながりを見つけることです。

マインドマップ ― 考えを枝分かれさせて描く

マインドマップ(中心のテーマから、関連する言葉を枝のように分岐させて描く図)は、考えを絵や図で表現する段階の代表的な手法です。

紙の中心にテーマを書き、そこから連想する言葉を線でつなぎながら枝分かれさせていきます。文章で書き並べるのと違い、言葉と言葉のつながりが視覚的に一目で分かるのが特徴です。頭の中で漠然と考えているだけでは気づかない関連性が、描いているうちに見えてくることがあります。

近年は、こうした発想の整理を助けてくれる生成AIツールも登場しています。テーマについて対話しながら、関連する論点を洗い出してもらうといった使い方も、マインドマップづくりの助けになるでしょう。

もっと深く ― 3つの手法は、ひとつの流れでつながっているDEEP DIVE

ここまで、ブレーンストーミング・KJ法・マインドマップを、それぞれ独立した手法として紹介しました。ですが実は、この3つは1本の作業の流れとしてつなげて使うことができます。

「広げる」と「まとめる」を分けて考える

発想法の3段階を思い出してください。「膨らませる」「絵や図で表現する」「まとめる」でした。ブレーンストーミングは膨らませる作業、KJ法はまとめる作業です。この2つを同じタイミングでやろうとすると、うまくいきません。アイデアを出している最中に「これは使えるか」と評価を始めてしまうと、量が出なくなるからです。まず出す、あとでまとめる。この順番を守ることが、発想法全体を機能させる鍵になります。

マインドマップは「広げる」にも「まとめる」にも使える

マインドマップは少し特殊で、中心テーマから枝を伸ばして考えを広げる使い方もできれば、出そろったアイデアを描き直して関係を整理する使い方もできます。ブレーンストーミングで量を出し、KJ法でグループにまとめ、その結果をマインドマップに描き直して全体像を見渡す——という組み合わせ方をすると、それぞれの手法の弱点を補い合うことができます。

道具ではなく、態度を身につける

発想法は、手順さえ覚えれば誰でもすぐに使える道具です。しかし本当に大事なのは、手順そのものよりも「批判せずにまず出す」「あとから整理する」という態度を身につけることです。この態度は、次のレッスンで扱う情報モラルや、日々の問題解決の場面でも、形を変えて役立ちます。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室でよく交わされるやりとりを。

受講者
ブレーンストーミングって、結局いいアイデアがひとつも出ないまま終わることもありませんか?
講師講師
それでいいんです。ブレーンストーミングは「いいアイデアを出す」時間ではなく、「量を出す」時間だと割り切ってください。いいアイデアを選ぶのは、そのあとのKJ法の役目です。
受講者
グルーピングのやり方に、正解はあるんですか?
講師講師
ないんです。同じカードを見ても、まとめる人が違えば違う形になります。だから研修でも、私が一緒にグルーピングしながら「こういう見方もできますよ」と声をかけるようにしています。
講師メモ ― 現場から

研修でブレーンストーミングをやるときは、「宝くじで10億円が当たったら」というお題をよく使います。誰でもすぐに考えられて、しかも正解がないテーマなので、批判しない雰囲気を作る練習にちょうどいいのです。お菓子をつまみながらやると、場がさらにやわらぐこともあります。

KJ法は、私がExcelでカードの内容をまとめながら、皆さんの発言を聞いてその場でグルーピングしていくやり方で進めることが多いです。書いている本人よりも、外から見ている講師のほうが「これとこれは近いのでは」と気づくことがよくあります。

← 情報Ⅰ トップへ戻る