情報デザイン

Information Design

情報デザインとは ― 「きれいに見せる」ではなく「迷わず動ける」

情報デザインとは、必要な情報を、受け手が理解し、行動できる形に整理することです。ポイントは、見た目を「きれいに見せること」ではありません。大事なのは、見た人が迷わず動けるかどうかです。

情報デザインには、次の3つの基本があります。

基本内容
① 抽象化余計な情報を削り、本質だけを取り出す地図で、すべての建物を描かない
② 可視化目に見えない情報を、図や色で見えるようにするグラフ、アイコン、色分け
③ 構造化情報どうしの関係を整理する見出し、階層、分類

アフォーダンス ― 説明がなくても、行動したくなる形

アフォーダンスとは、物を見たときに、人が自然に取りたくなる行動との関係のことです。取っ手が付いていれば「引く」、平らな押し板が付いていれば「押す」、色分けされたゴミ箱を見れば「分別する」——私たちは、意識しないうちにこうした行動を選んでいます。

「説明がなくても行動できる状態」。これが、良いデザインだといえます。案内表示や貼り紙で説明を補うのではなく、形そのものが行動を導いている状態が、アフォーダンスがうまく働いている状態です。

言語・国籍を超えて伝える ― ピクトグラムという工夫

情報デザインでは、文字に頼らない伝達も重要になります。ピクトグラム(言葉を使わず、絵や記号だけで情報を伝える図記号)は、その代表例です。非常口マークやトイレマークは、日本語が読めない人にとっても、ひと目で意味が伝わります。文化や言語が違っても伝わる設計が、情報デザインには求められます。

情報の整理方法 ― 究極の5つの帽子掛け「LATCH」

情報をどう整理すればよいか迷ったとき、参考になる考え方があります。アメリカの情報デザイナー、リチャード・S・ワーマンが提唱した「究極の5つの帽子掛け」、頭文字を取ってLATCH(ラッチ)と呼ばれる考え方です。

頭文字英語日本語
LLocation場所地図、フロア案内
AAlphabet文字順辞書、名簿
TTime時間年表、時系列
CCategoryカテゴリー商品分類
HHierarchy階層価格順、ランキング、大きさ順

どんな情報も、この5つのうちのどれかで整理できるといわれています。何かを分かりやすく伝えたいときに、この5つのどれで切り分けられそうか考えてみると、整理の糸口が見つかりやすくなります。

考えてみましょう ― デザインだけで行動を変える

情報デザインの力を体感できる、ひとつの演習を紹介します。次のような場面を想像してください。

考えてみましょう

男女共用トイレで、男性が立ったまま用を足さないように誘導したい。ただし、条件がひとつあります。貼り紙も、口頭での注意書きもいっさい使えません。デザインだけで、この課題を解決してください。

少し考えてみてください。文字を使わずに、人の行動をどう変えられるでしょうか。

考えたあとに ― 答えの例。実際にこの演習をすると、次のようなアイデアがよく挙がります。便器そのものを座る前提の形にする。床との距離を低くして、立って使いにくくする。個室のような、座ることを前提とした配置にする。便器の前に荷物置きを設置し、自然と近づいて座る動線を作る——どれも、立てば分かるように工夫されたものばかりで、正解はひとつではありません。

もうひとつ、足跡を座る向きに床へ印字しておく、という工夫もあります。視覚的に「ここに向かって座る」という動線を示すだけで、説明はいっさい要りません。これも立派なアフォーダンスの応用です。

もっと深く ―「情報建築」を作った男、リチャード・S・ワーマンDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、LATCHの話に興味を持った方ほど「そうだったのか」となる話です。

「Information Architect(情報建築家)」という言葉を作った人

リチャード・S・ワーマンは、大量の情報をどう整理し、分かりやすく提示するかを専門に研究してきた人物で、「情報建築家」という言葉を最初に使ったことでも知られています。LATCHは、彼が「情報を整理する方法は、突き詰めればこの5種類しかない」と提唱した考え方です。

TEDを作ったのも、実は同じ人物

ワーマンは、いまや世界的に有名なプレゼンテーションの祭典TED(Technology, Entertainment, Design の略。著名人が短い講演を行うカンファレンス)を1984年に創設した人物でもあります。TEDのステージでは、複雑なテーマをいかに整理し、短い時間で分かりやすく伝えるかが常に問われますが、これはまさにLATCHの発想——情報デザインの実践そのものだといえます。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。

受講者
貼り紙も口で言うのも禁止って、本当にできるんですか?
講師講師
できます。それが情報デザインの力です。実際に工夫を考えてもらうと、みなさん思った以上にたくさんアイデアが出てきますよ。
受講者
足跡を床に描くアイデア、実際に見たことあります!
講師講師
あれも立派な情報デザインです。「座ってください」と書かなくても、足跡の向きだけで、人は自然とその通りに立つんです。
講師メモ ― 現場から

この演習をすると、最初は戸惑っていた受講者も、次々とアイデアを出し始めます。「正解がひとつではない」という体験自体が、情報デザインの本質を伝えるうえでいちばん効果的だと感じています。

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