情報モラル
Information Morals情報モラルとは ― 法律・ルール・マナーの3層
情報モラル(情報社会で適正な活動を行うためのもととなる考え方や態度)を理解するには、まず私たちの行動を縛っている3つの層を区別しておく必要があります。
- 法律。いちばん上位にあるルールです。破ると罰則が科せられます。
- ルール。法律に準拠して定められた決まりごとです。組織や場によって内容が異なります。
- マナー。人として生きるために守るべきもの。破っても罰則はありませんが、周囲との信頼関係を損ないます。
この3層は、インターネットの世界にもそのまま当てはまります。インターネットにも法律は適用されます。不正アクセスや違法アップロードといったルール違反には罰則が科せられますし、ネット上にもマナーは存在します。「インターネットだから何をしても許される」という考え方は、この3層構造を無視した誤解です。
モラル(倫理・道徳)とマナー(行儀・作法)は、似ているようで少し違う言葉です。モラルは「どう考え、どう行動すべきか」という内面の指針であり、マナーはそれが具体的な振る舞いとして表れたものと捉えると整理しやすくなります。情報モラルをかみ砕くと、法律について知り、それを守ること、発信する内容に責任を持つこと、他者の権利を尊重し、侵害しないこと、自分や他人の個人情報を公開しないこと、そしてネットの相手を簡単に信用しないこと、という5つの態度としてまとめられます。
考えてみましょう ― スマートフォンとパソコンのマナー
情報モラルは、遠い法律の話だけではありません。日常のちょっとした振る舞いにも表れます。次の項目を読みながら、自分の普段の使い方と照らし合わせて考えてみましょう。
スマートフォンのマナー。歩きスマホをしない。図書館や映画館、美術館では電源を切る、またはサイレントモードにする。自転車・自動車の運転中に操作をしない。自撮り棒を使うときは周囲を確認してから。SNSへの投稿は、読む相手への配慮を忘れない。コメント欄に書き込むときは、相手を尊重した言葉を選ぶ。評価の低いレビューに感情的に反応しない——対応すると、かえって荒れてしまうことが多いものです。思いつくままに挙げてみると、これだけの項目が出てきます。
パソコンのマナー。キーボードを強く打ちすぎない。打鍵音は、思っている以上に周囲に響いています。マウスの操作音・クリック音にも配慮する。新幹線や飛行機の中でパソコンを操作するときは、周囲からの画面の見え方や、入力履歴が残る点にも注意する。こちらも、挙げていけばまだまだ出てくるはずです。
こうした項目に共通しているのは、どれも「法律で決まっているわけではないが、破ると周囲の信頼を損なう」ことです。これがまさに、マナーという層の役割です。
ながらスマホ ― マナーが法律に格上げされた例
マナーとして語られることの多い「ながらスマホ」ですが、自動車の運転中に限っては、事情が異なります。運転中のスマートフォン使用(ながら運転)は、もはやマナーの問題ではなく、明確な法律違反です。
2019年12月1日、道路交通法が改正され、運転中のスマートフォン等の使用に対する罰則が大きく引き上げられました。改正前後を比べると、その差は次のとおりです。
| 違反の内容 | 改正前(〜2019年11月30日) | 改正後(2019年12月1日〜) |
|---|---|---|
| 保持(通話・画面注視など、事故に至らなかった場合) | 5万円以下の罰金/反則金6,000円(普通車)/違反点数1点 | 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金/反則金18,000円(普通車)/違反点数3点 |
| 交通の危険を生じさせた場合(事故等) | 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金/反則金9,000円(普通車)/違反点数2点 | 1年以下の懲役または30万円以下の罰金/反則金の適用はなく刑事罰の対象/違反点数6点(免許停止) |
違反点数だけを見ても、保持で1点から3点、事故を伴う場合は2点から6点と、いずれも3倍に引き上げられています。6点は一発で免許停止になる水準です。マナーの延長のように扱われがちな「ながらスマホ」が、いかに重い法律違反として位置づけ直されたかが分かります。詳しくは警察庁の案内ページで確認できます。
ここまで、情報モラルを「法律・ルール・マナー」の3層で整理してきました。ながらスマホの厳罰化は、この3層が固定されたものではなく、状況に応じて層をまたいで移動することを示す好例です。
なぜ「マナー」のままでは足りなくなったのか
マナーは、周囲との信頼関係を保つための緩やかな決まりごとです。破っても罰則はなく、守るかどうかは基本的に本人の判断に委ねられます。ところが、運転中のスマートフォン使用による死亡事故が統計的に増加し、社会全体に明確な危害が生じていることが数値で裏付けられるようになると、「本人の判断に任せる」というマナーの前提が崩れます。ここで初めて、国が罰則をもって強制する法律への格上げが検討されるのです。
マナーから法律への距離は、いつも同じではない
すべてのマナー違反が法律になるわけではありません。歩きスマホは危険だと分かっていても、現時点では多くの地域で罰則付きの法律にはなっていません(自治体レベルの条例で規制が進んでいる例はあります)。一方で、運転中のスマートフォン使用は全国一律で厳罰化されました。この違いを分けているのは、「被害の重大さ」と「被害を受けるのが自分だけでなく他者にも及ぶかどうか」です。ながら運転は、歩行者や他の車両を巻き込む重大事故につながるからこそ、法律という最も強い層に引き上げられたと考えられます。
この視点を、次のレッスンにも持ち越す
「本人だけの問題か、他者を巻き込む問題か」という物差しは、この後のレッスンで扱う個人情報の流出やSNSでのトラブルを考えるときにも役立ちます。自分の行動が、自分だけでなく誰かを傷つける可能性があるかどうか——情報モラルを考えるときの、ひとつの軸として覚えておいてください。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室でよく交わされるやりとりを。
講師
講師情報モラルの授業は、法律の条文を読み上げるだけでは眠くなってしまいます。私は「法律・ルール・マナー」の3層をまず示してから、「今日話す内容が、このどこに当たるか」を都度確認してもらうようにしています。ながらスマホの話は、まさにマナーだと思っていたものが法律に切り替わった実例なので、毎回いちばん反応がいいところです。