個人情報の流出
Personal Information個人情報とは ― ひとりの人間を特定できる情報
個人情報とは、生存する個人に関する情報で、氏名・住所・生年月日・性別・電話番号・学歴・職業などによって、特定の個人を識別できる情報のことです。単独では誰か分からなくても、他の情報と組み合わせることで個人を識別できる情報も、個人情報に含まれます。
個人情報は、性質によっていくつかの種類に分けて整理できます。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 基本4情報 | 氏名・住所・生年月日・性別。個人情報の中でも特に基本となる4項目。 |
| 個人符号番号 | パスポートの番号、運転免許証の番号、マイナンバーなど、番号・記号・符号によって個人を識別できる情報。 |
| 要配慮個人情報 | 人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴など、特に慎重な扱いが求められる情報。 |
考えてみましょう ― 自分の個人情報、どこまで出していい?
個人情報は「隠すべきもの」と一律に考えがちですが、実際には人によって、また情報の種類によって、公開してよい範囲は変わってきます。年賀状のやりとりを思い出してください。多くの人が、住所を当たり前のように書いて送り合っています。あれも立派な個人情報のやりとりです。
考えてみましょう。自分の氏名、住所、顔写真、勤務先、病歴——これらのうち、どこまでなら公開してよいと思いますか。理由もあわせて考えてみてください。人によって「これは平気」「これは絶対に隠したい」という線引きは異なるはずです。大切なのは、公開してよい情報とそうでない情報の境界を、自分の意思で決めておくことです。
考えてみましょう ― 場所を特定してみよう
次の2枚の写真を見てください。どちらも、何気なく撮られた1枚の写真です。写っている手がかりから、撮影された場所を推理できるでしょうか。
駅名の看板、窓の外の景色、壁の柄、椅子のデザイン——写真には、撮影者が意識していない手がかりが数多く写り込んでいます。人間の目で見るだけでも、これだけの情報から場所を絞り込めることがあります。
さらに厄介なのは、写真そのものに位置情報が記録されている場合があることです。スマートフォンで撮影した写真には、撮影した瞬間のGPS座標が緯度・経度の数値として記録されていることがあります。たとえば「北緯39度36分43.0秒、東経140度13分13.9秒」のように、小数で得られた座標を度・分・秒の形式に変換すると、地図アプリにそのまま入力して、撮影場所をピンポイントで特定できてしまいます。写っている景色から場所が分からなくても、写真データそのものが答えを教えてしまうのです。
なお、XやFacebookといった主要なSNSに投稿された画像は、投稿の過程でこうした位置情報が自動的に取り除かれるのが基本的な仕組みです。ただし、これはあくまでSNS側の仕様であり、写真をメールやメッセージアプリでそのまま送った場合には、位置情報が残ったままになることがあります。「知らないうちに自宅や職場の場所を教えてしまっていた」という事態は、決して他人事ではありません。
オプトインとオプトアウト
個人情報の取り扱いを考えるうえで欠かせない、2つの考え方を紹介します。オプトインは、「同意しますか? 同意していただけたら、メールを送ります」という仕組みです。利用者が明確に同意しない限り、情報は送られてきません。
一方のオプトアウトは、「同意しませんか? 拒否の意思表示をいただかない限り、送り続けます」という仕組みです。利用者が明確に拒否しない限り、情報が送られ続けます。
日本では、迷惑メール規制法によってオプトアウト方式のメール配信・広告配信は禁止されており、基本的にオプトイン方式が採用されています。
この2つの方式の違いは、メールや広告以外の場面でも興味深い結果を生みます。臓器提供の意思表示はその代表例です。日本はオプトイン方式(自分から提供の意思を示した人だけが対象になる)を採用しており、意思表示をしている人の割合はおよそ20%です。一方、オプトアウト方式(拒否しない限り提供対象になる)を採用しているヨーロッパの国々では、およそ9割の人が提供に同意している状態になっています。制度の初期設定をどちらにするかだけで、これほど大きな差が生まれるのです。
オプトインとオプトアウトの臓器提供の例で見えてくるのは、人には現状維持バイアス(今の状態や、あらかじめ設定された初期設定を変えずにそのまま受け入れやすい心理的な傾向)が働いているという事実です。
「選ばなかった」のではなく「選ばされなかった」
オプトアウト方式の国で臓器提供の同意率が高いのは、住民ひとりひとりが強い提供意思を持っているからとは限りません。多くの人は、初期設定のまま、あえて「拒否」のボタンを押さなかっただけです。逆にオプトイン方式の国で同意率が低いのも、提供に反対する人が多いからではなく、「わざわざ同意の手続きを取る」という一手間を、多くの人が後回しにしているだけかもしれません。初期設定こそが、実質的な答えを決めてしまうのです。
この仕組みは、個人情報の世界にも広がっている
この現状維持バイアスは、SNSのプライバシー設定にもそのまま当てはまります。多くのサービスは、初期設定のまま使うと、投稿や位置情報が公開範囲の広い状態になっていることが少なくありません。「設定を変えていないから大丈夫」ではなく、初期設定そのものが、自分にとって望ましい公開範囲になっているかを、一度は自分の目で確認することが大切です。オプトインかオプトアウトかを問う場面に出会ったら、それが自分にとってどちらの初期設定なのかを、まず意識してみてください。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室でよく交わされるやりとりを。
講師
講師「自分の個人情報、どこまで出していい?」という問いを最初に投げかけると、多くの方が「全部隠したい」と答えます。でも年賀状の話をすると、たいてい「あ、そういえば住所は普通にやり取りしていました」と気づかれます。個人情報は一律に隠すものではなく、相手や場面によって公開の範囲を自分で選ぶものだ、という感覚を持ってもらうのが、この演習のねらいです。