問題解決の流れ
Problem Solving問題解決のプロセス
問題を解決するときの流れは、次の5つのステップに整理できます。
- 問題の発見 ― 何が問題なのかに気づく
- 問題の定義・解決の方向性の決定 ― 問題の本質を言葉にし、どちらの方向に進むかを決める
- 解決方法の提案・計画の立案 ― 具体的な方法を考え、計画にする
- 結果の予測・計画の実行 ― どうなりそうかを見立てながら、実際に動く
- 振り返り ― やってみた結果を検証し、次に活かす
発明家のトーマス・エジソンは、1日に16時間も研究に没頭していた努力家として知られています。「1%のひらめきと99%の(たゆまぬ)努力」という言葉も、この人物のものとしてよく引用されます。問題解決は、ひらめきだけでなく、この5つのステップを地道に繰り返す作業でもあるのです。
考えてみましょう―新幹線のフルリクライニング問題
新幹線の座席は、後ろに大きく倒す(リクライニングする)ことができます。しかし前の席を目一杯倒されると、後ろの席の人は弁当が食べづらくなったり、窮屈さを感じたりします。これを、先ほどの5ステップに沿って考えてみましょう。
- 課題は何でしょうか。まず思いつくのは「弁当が食べづらい」という点でしょう。
- 一方で、座席を倒すこと自体は、乗客に認められた正当な権利でもあります。
- 新幹線には外国からの旅行者も乗ります。座席を倒すことへの感覚は、文化によっても違うかもしれません。
- 権利とマナーがぶつかっているように見えるこの状況で、そもそもの問題は何でしょうか。「倒していいか悪いか」という二択ではなく、問題をどう定義し直せば、解決策が見えてくるでしょうか。
実際に鉄道会社は、この問題について「利用する際は、後ろのお客様のご様子にご留意いただくよう、ご理解とご協力をお願いいたします」といったメッセージを案内しています。このメッセージを、もっと良い伝え方に変えるとしたら、あなたならどう書き直しますか。権利を否定せず、かつ、後ろの人への配慮も伝わる言葉を考えてみてください。
メディアリテラシー(発信側)
メディアリテラシーとは、ただ情報を疑い、正しさを見抜くための力だけではありません。同じ事実であっても、何を切り取り、どの順番で、どんな言葉で伝えるかによって、受け取られ方は大きく変わります。これは、情報を受け取る側だけでなく、発信する側にも問われる力です。
事実を並べるだけでは、魅力は伝わりません。かといって、事実をねじ曲げる必要もありません。大切なのは、事実を歪めずに、意味が伝わる形に編集することです。
先ほどのリクライニング問題で言えば、「座席を倒された→怒りがこみあげてくる」という伝え方は、事実は含んでいても、読み手の感情を逆なでするだけで、行動の変化にはつながりにくい伝え方です。これに対して、たとえば「全部倒すことが当然だと、温かい気持ちでご対応ください」という呼びかけに変えるとどうでしょうか。「弁当は食べにくくなるけれど、全部倒していいですよ」という、権利を否定しない、温かい編集に変わります。同じ事実を伝えるにしても、編集次第で受け手の反応はまったく違うものになるのです。
プレゼンテーションの基本
自分の考えを他者に伝えるときの型として、PREP法(Point・Reason・Example・Pointの頭文字)があります。
- P(Point・結論):諦めないことは重要だ。
- R(Reason・理由):やりぬく力こそ、実現する力に直結するからだ。
- E(Example・事例):エジソンは失敗を成功への手段とし、発明を積み重ねていった。
- P(Point・結論):だから、諦めないことは重要だ。
小説に起承転結のルールがあるように、プレゼンテーションにも基本的な型があります。これを守るだけで、及第点のスライドは作れるようになります。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋には困りません。
PDCAサイクルとの共通点
この章で見た「発見→定義→提案→実行→振り返り」という5ステップは、ビジネスの現場でよく使われるPDCAサイクル(Plan・Do・Check・Actの頭文字。計画し、実行し、確認し、改善するという4段階の輪)と、とても似た構造をしています。「振り返り」で終わるのではなく、その振り返りが次の「問題の発見」につながっていく――つまり、この5ステップは一直線ではなく、輪になって繰り返されるものだと捉えると理解が深まります。
「④実行」がいちばん大変
5つのステップのうち、実際にいちばん労力がかかるのは、計画を現場に当てはめて実行する段階です。計画を立てるところまでは順調に進んでも、実際に運用に落とし込む段階では、関係者との調整や、現状とのすり合わせが必要になり、時間もエネルギーも要します。「問題解決は、計画よりも実行がすべて」と言われることがあるのは、このためです。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室で交わされるやりとりと、講師として感じていることを。
講師
講師コンサルティングの現場で、私は次のような手順を踏むことが多いです。①現在問題となっているところを洗い出す ②オペレーションの見直しをして、データの流れを確認する ③整理・改善する ④実際のオペレーションに当てはめる ⑤問題があったときと比べて、どれくらい楽になったかを確認する ⑥それを次に活かせる形にできるか考える。この中でも④の「オペレーションに当てはめる」段階がいちばん大変です。計画を立てたときと、実際に現場で運用したときとでは、必ずと言っていいほどズレが生じます。確認のやりとりが増えて、双方にとってストレスがかかる場面でもあります。(※このくだりは実体験部分のため、公開前に文言の調整をお願いします。)