音と画像のデジタル表現
Sound & Image音のデジタル化 ― 標本化・量子化・符号化
音は本来、空気の振動が連続的に変化する、アナログな現象です。この連続的な波を、コンピュータが扱える0と1のデータに変換する処理は、大きく3つの段階に分けて考えることができます。
- 標本化(サンプリング)。一定の時間間隔で、波の高さを区切って読み取ります。区切る間隔が短いほど、元の波形に近い、なめらかなデータになります。
- 量子化。読み取った波の高さを、決まった段階の数値に当てはめます。段階の数が多いほど、元の音により近い、精度の高いデータになります。
- 符号化。量子化された数値を、0と1の並び(2進数)に変換します。ここまでの処理を経て、はじめて音はデジタルデータとして保存できる形になります。
元の波形 → 標本化 → 量子化 → 符号化。この順番を経ることで、はじめてアナログな音がデジタルデータへと変換されます。
ラスタデータとベクトルデータ ― 写真と、文字や図形の違い
画像データには、大きく分けてラスタデータ(ピクセル、つまり点の集まりで形を表現する画像データ)とベクトルデータ(座標や曲線を表す数式で形を表現する画像データ)の2種類があります。手元に画像編集ソフト(Photoshopなど)があれば、写真を大きく拡大したときと、文字(テキストレイヤー)を大きく拡大したときとで、見え方がどう変わるか、実際に試して比べてみましょう。
上の図は、牛久大仏の写真に、白い文字を重ねたものです。写真の部分はラスタデータです。写真はピクセルの集まりでできているため、拡大していくとギザギザが目立つようになります。重ねた文字の部分はベクトルデータです。文字は数式で形を管理しているため、どれだけ拡大しても輪郭がなめらかなまま保たれます。ベクトルデータは、文字や図形データの代表例です。
①ピクセル単位で自由に加工できるかどうか。ベクトルデータは数式で形を管理しているため、拡大や縮小といった「形そのもの」の編集は得意ですが、ぼかす、ノイズを加える、にじませる、質感(テクスチャ)を貼る、部分的に削るといった、画素単位の加工は苦手です。ラスタデータに変換すると、1ピクセル単位で編集できるようになるため、写真の加工やアート的な表現が可能になります。
②表示を完全に固定できるかどうか。ベクトルデータは、フォントやレンダリング方式(画面に描き出す仕組み)、使用するソフトの仕様といった環境によって、見え方が変わってしまうことがあります。ラスタデータにすると、「見た目そのもの」を固定できます。Web表示や印刷物の最終的な出力では、この「見た目が変わらない」という性質が重要になるため、制作の途中はベクトル、完成形はラスタという使い分けがよく行われます。
一方で、ラスタデータにはデメリットもあります。拡大すると劣化する、解像度に依存する、形そのものの再編集が難しくなる、といった点です。
つきつめると、ベクトルは構造を持つデータ(いわば設計図)、ラスタは結果を固定したデータ(いわば写真)だとまとめられます。編集可能な構造データを、完成画像として確定させる作業のことをラスタライズ(ベクトルデータなどの構造化されたデータを、ピクセルの集まりであるラスタデータに変換すること)と呼びます。
ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、標本化・量子化のイメージがつかめた方には、面白い話です。
標本化・量子化の細かさが、音質を左右する
前半で見た標本化と量子化は、細かく行うほど元の音に近づきますが、その分データ量も大きくなります。音楽CDでよく知られる「44.1kHz/16bit」という表記は、1秒間に44,100回、波の高さを読み取り(標本化)、その高さを65,536段階(2の16乗)で数値化している(量子化)ことを表しています。標本化の回数を増やすほど、量子化の段階を増やすほど、元の音に近い高音質なデータになりますが、同時にファイルサイズも大きくなるという関係にあります。
画像にも、同じトレードオフがある
実はこのトレードオフ(何かを得ると、何かを失う関係)は、画像にも当てはまります。ラスタデータは、ピクセルを細かくする(解像度を上げる)ほど、写真らしい滑らかな表現ができますが、その分データ量が増えます。音も画像も、デジタル化とは「どこまで細かく数値に置き換えるか」という選択の連続なのです。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室でよく交わされるやりとりを。
講師
講師授業でPhotoshopを開いて、実際に写真とテキストレイヤーを拡大して見せると、「うわ、本当に違う」という声があがります。言葉で説明するより、実際に目で見てもらうのが一番伝わる瞬間です。