ユニバーサルデザイン

Universal Design

ユニバーサルデザイン ― 最初からみんなが使えるように

ユニバーサルデザインとは、できるだけ多くの人が、特別な配慮なしに使えるように設計するという考え方です。年齢や性別、障がいの有無、国籍などに関わらず、多くの人にとって使いやすいことを目指します。自動ドア、段差の少ない入り口、誰でも読みやすいピクトグラムなどが、その例です。最初から「みんなが使えること」を前提に考えるのが、この考え方の特徴です。

アクセシビリティ ― 使えない人をなくすための配慮

アクセシビリティとは、特定の人が利用しにくい状況をなくすことです。特に、障がいのある人や高齢者が情報やサービスにアクセスできるかどうかに注目します。Webページに音声読み上げに対応したテキストを入れる、動画に字幕をつける、といった工夫が例です。ユニバーサルデザインが「みんなのために、はじめから広く設計する」という考え方だとすると、アクセシビリティは「使えない人をなくすための、具体的な配慮」だといえます。

ユーザビリティ・UI・UXという似た言葉を整理する

ここで、似たような場面で使われる3つの言葉も整理しておきましょう。ユーザビリティとは「使いやすさ」のことです。操作が分かりやすいか、迷わず目的を達成できるか、ストレスなく使えるか、といった観点を指します。効率よく目的を達成できるかどうか、という視点に近い概念です。

ユーザーインターフェース(UI)は「人と機械が接する部分」です。画面のデザイン、ボタン、メニュー、キーボード、タッチパネルなど、実際に触れる部分を指します。スマートフォンのアプリ画面や、Webサイトのレイアウトは、ユーザーインターフェースの例です。いわば「見た目と操作部分」のことだといえます。

ユーザーエクスペリエンス(UX)は「使ったときの体験全体」です。操作のしやすさだけでなく、楽しい、安心できる、また使いたいと思える、といった感情も含まれます。UIは体験の一部ですが、UXはそれを含む、もっと広い概念です。買い物サイトなら、商品を探しやすいだけでなく、届くまでのワクワク感やサポートの安心感まで含めて考えるのが、ユーザーエクスペリエンスです。

この3つの違いは、身近な道具にあてはめると分かりやすくなります。たとえば包丁を思い浮かべてください。「切るための道具だと一目で分かる」のがユーザビリティ、「柄を持てば自然に切れる」形になっているのがユーザーインターフェース、そして「切り心地が心地よい」と感じられることがユーザーエクスペリエンスです。ひとつの道具の中に、3つの視点が同時に存在しています。

用語何を指すか
ユニバーサルデザイン最初からみんなのために設計する考え方
アクセシビリティ使えない人をなくすための配慮
ユーザビリティ使いやすさ
ユーザーインターフェース(UI)人と機械が接する部分
ユーザーエクスペリエンス(UX)使ったときの体験全体

考えてみましょう ― 自動改札機を分解してみる

駅の自動改札機を思い浮かべてください。自動改札機は、これまで見てきた複数の観点で工夫されています。実際に自分が改札を通るときの動作を思い出しながら、次のことを考えてみましょう。

この改札機のどこが「使いやすさ(ユーザビリティ)」の工夫で、どこが「接する部分(ユーザーインターフェース)」の工夫でしょうか。そして、通り抜けたときの体験全体(ユーザーエクスペリエンス)は、どんな要素で決まっているでしょうか。ひとつの道具の中に、複数の概念が同時に関わっていることに気づくはずです。

もっと深く ― 段差をなくすと、車椅子の人以外にも便利になるDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、ユニバーサルデザインとアクセシビリティの関係が気になった方ほど「そうだったのか」となる話です。

車椅子のために作られた、歩道の切り下げ

道路の縁石が、交差点のところだけ低くなっている「切り下げ(カーブカット)」を見たことがあるはずです。これはもともと、車椅子を使う人が歩道と車道の段差を越えられるようにと考え出された工夫でした。

使ったのは、車椅子の人だけではなかった

ところが実際に設置してみると、この段差解消の恩恵を受けたのは車椅子の利用者だけではありませんでした。ベビーカーを押す人、キャリーケースを引く旅行者、台車で荷物を運ぶ配達員、自転車に乗る人——特定の誰かのために作られた工夫が、結果的にほとんどすべての人の役に立つことが分かったのです。この現象は、英語でカーブカット効果(Curb-Cut Effect。特定の人のための配慮が、結果的に社会全体の利益になる現象)と呼ばれています。

ユニバーサルデザインが目指しているのは、この状態

最初は「特定の人が困っている状況をなくす」というアクセシビリティの視点から生まれた工夫が、結果的に「みんなが使いやすい」というユニバーサルデザインの状態にたどり着く——これは、2つの考え方が対立するものではなく、地続きであることを示す好例です。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。

受講者
ユニバーサルデザインとアクセシビリティって、結局何が違うんですか?似すぎていて覚えられません。
講師講師
覚え方のコツは「出発点」です。ユニバーサルデザインは最初からみんなのために設計する考え方、アクセシビリティは使えない人をなくすための配慮。どちらも、最終的には同じ場所を目指しているんですけどね。
受講者
ユーザビリティとユーザーインターフェースの違いも、いつも混乱します。
講師講師
包丁で覚えてください。切れると分かる形がユーザビリティ、柄を持てば切れる形がユーザーインターフェースです。
講師メモ ― 現場から

自動改札機の演習をすると、最初は「ユーザビリティの工夫です」の一言で終わってしまう受講者が多いのですが、掘り下げていくと「ICカードをかざす場所の高さはユーザーインターフェースの工夫」「一瞬で通れる快適さはユーザーエクスペリエンス」というふうに、複数の視点が同時に存在していることに気づいていきます。

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