ソリティアでマウス練習

Solitaire

なぜ、最初の教材がトランプなのか

マウスの操作は、突き詰めると4つしかありません。クリック(1回押す)、ダブルクリック(2回続けて押す)、ドラッグ&ドロップ(つまんで、運んで、離す)、そして右クリック。パソコン操作のほとんどは、この4つの組み合わせです。

では、この4つはどう練習するのがいいか。「クリックの練習をしましょう」と言われて画面のボタンを何十回も押すのは、退屈で続きません。ところが、トランプゲームのソリティアは、カードをクリックでめくり、ドラッグで運び、ドロップで重ねる——マウスの基本動作が、ゲームのルールそのものになっています。夢中で遊んでいるうちに、手がマウスを覚えてしまう。だから私の講座は、最初の授業がトランプなのです。

その前に ― マウスの持ち方

ゲームの前に、持ち方だけ確認しましょう。マウスは握る道具ではなく、手のひらを乗せる道具です。卵をそっと包むように手のひらをかぶせて、人差し指を左ボタン、中指を右ボタンの上に置きます。力は要りません。

動かすときは、腕ごと動かすのではなく、手首から先を滑らせる感覚です。机の端まで来てしまったら、マウスを浮かせて戻せばいい——これ、初心者の方は意外と知りません。画面のカーソル(矢印)は、マウスが机に触れているときだけ動きます。浮かせて戻すのは、ズルではなく正しい使い方です。

ソリティアの始め方(Windows 11)

Windows には、昔からソリティアが入っています。現在の名前は Microsoft Solitaire Collection(マイクロソフト・ソリティア・コレクション)です。

  1. スタートボタンをクリックして、そのままキーボードで「solitaire」(または「ソリティア」)と入力します。
  2. 検索結果に出てきた Microsoft Solitaire Collection をクリックします。見つからない場合は、Microsoft Store(ストア)から無料で入手できます。
  3. いくつか種類が並びますが、選ぶのは一番左の クロンダイク(Klondike)。世界で「ソリティア」といえば、これのことです。

ルールはシンプルです。場に並んだカードを「赤と黒を交互に、大きい数字から小さい数字へ」重ねて整理しながら、右上の4つの枠に「同じマークをAから順に」積み上げていく。最初は理解が半分でも構いません。カードをつまんで運べる場所は、ゲームが光って教えてくれます。つまむ、運ぶ、離す。この繰り返しこそが、今日の授業です。

遊ぶ前の注意書き

3つだけ、お約束です。ひとつめ、無料版はときどき広告の動画が流れます。故障ではないので、慌てずに。広告を消すための「×」ボタンは、少し待つと画面の隅に現れます。ふたつめ、有料版(Premium)への誘いの画面が出ることがありますが、練習に課金は不要です。「後で」「閉じる」で大丈夫。買う・買わないの画面で迷ったら、何も押さずに家族や周りの人に相談してください。

みっつめが一番大事です。ソリティアには、時間が溶けるという重大な副作用があります。「1ゲームだけ」のつもりが、気づけば夜——これは受講者の皆さん全員が通る道です。練習としては1日20〜30分で十分。それ以上は、趣味の時間としてどうぞ。

もっと深く ― ソリティアは最初から「教材」だったDEEP DIVE

「授業でゲームなんて」と思った方に、歴史の話をひとつ。実は、ソリティアでマウスを練習するのは、私の思いつきではありません。Windowsの設計そのものなのです。

Windows 3.0 の狙い

ソリティアが Windows に搭載されたのは1990年、Windows 3.0 の時代です。当時、マウスという道具に触れたことのある人はほとんどいませんでした。そこでマイクロソフトは、ドラッグ&ドロップを楽しく覚えてもらうための教材としてソリティアを同梱した、と言われています。カードをつまんで運ぶ動作は、ファイルをつまんで運ぶ動作の予行演習だったわけです。

マインスイーパは「クリックの教材」

続く Windows 3.1 で加わったマインスイーパも同じです。小さなマスを狙って正確に押す=クリックの精度、旗を立てる=右クリックの練習になっています。世界中の会社員が仕事中にこっそり遊んだこの2つのゲームは、実は世界最大規模のパソコン教材でした。ソリティアで練習するのは、いわば由緒正しい入門法なのです。

教室のひとこま

このテーマを教えるとき、教室で毎回のように起きるやりとりを。

受講者
先生……授業中に、ゲームをしていいんですか?
講師講師
いいんです。これが今日の教材です。カードをつまんで運べるようになった手は、明日からファイルをつまんで運べますから。
講師メモ ― 現場から

「ゲームをします」と言った瞬間、教室の空気がふっとゆるみます。そして30分後には、みんな無言で真剣です。マウスに苦手意識のある人ほど、ソリティアだと手が動く。「練習」と言うと固まる手が、「遊び」だと動くのです。

私の講座では、このソリティアと、次のタッチタイピングが最初の2本柱でした。この2つで「起動する・操作する・終了する」に慣れてもらってから、メモ帳と保存に進みます。急がば回れ、です。

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