第6章 6-3 / 確率

事象の独立性と試行の独立性

このページで学ぶこと

前回まで事象と確率の基本と練習問題を学びました。今回は確率論の中でも特に重要な独立性を扱います。「2つの事象が互いに影響しない」という関係を、数式で正確にとらえる回です。

本ページでは、事象の独立性試行の独立性を整理します。途中で前回学んだ排反な事象との違いも押さえます。実は「独立 ≠ 排反」──この区別は試験でも実務でも、ものすごく重要です。

後半では、独立性を使った6問の練習問題もご用意しています。

さえちゃん
さえ

独立性は確率の中でも特に大切な概念だよ! でも初学者がつまずきやすいのが、排反と独立を混同してしまうこと。ここをしっかり区別すれば、確率の問題が一段クリアに見えてくるよ!

1. 事象の独立性とは

まずは「2つの事象が独立である」とはどういうことか、直感的なイメージから入りましょう。

独立の直感的なイメージ

事象AとBが独立とは、「Aが起きたか起きていないかの情報が、Bが起きる確率に影響を与えない」関係のことです。お互いがまったく無関係に振る舞う、という感覚ですね。

身近な例

「片方の結果がわかったとき、もう片方の確率が変化するかどうか」が独立かどうかの分かれ目です。変化しなければ独立、変化すれば独立ではない、と覚えてください。

数式での定義

独立性を、確率の式できちんと定義しておきましょう。

FORMULA

事象AとBが独立であるとは、次の式が成り立つこと:
P(A∩B) = P(A) × P(B)

AかつBの確率が、Aの確率とBの確率の掛け算になる」という関係です。これは確率の乗法定理と呼ばれる重要な公式の、独立な場合における特殊な形です。

具体例で確認

EXAMPLE

コインを2回投げる試行で、A=「1回目が表」、B=「2回目が表」とします。

  • P(A) = 1/2
  • P(B) = 1/2
  • P(A∩B) = 1/4(2回とも表になるのは(表,表)の1通り、全事象は4通り)

ここで、P(A) × P(B) = 1/2 × 1/2 = 1/4 となり、P(A∩B) と一致します。よってAとBは独立です。

2. 独立な場合の乗法定理

独立性が成り立つ場合、「AかつBの確率」を簡単に計算できるようになります。これが乗法定理の使いどころです。

独立な事象の確率は掛け算でOK

AとBが独立なら、P(A∩B) = P(A) × P(B)。これだけです。複雑な場合分けをしなくても、それぞれの確率を掛けるだけで「両方起こる確率」が求まります。

3つ以上の事象でも同じ

独立な3つの事象A, B, Cがあれば、

FORMULA

P(A∩B∩C) = P(A) × P(B) × P(C)

たとえば前回の練習問題6で出てきた「サイコロを3回投げて1が1回も出ない確率」は、各回の試行が独立なので、(5/6) × (5/6) × (5/6) = 125/216 と計算できました。独立だからこそ、掛け算が許されるのです。

独立でないときは掛けてはいけない

逆に、独立でない事象の確率を掛けてしまうと、間違った答えが出てしまいます。たとえば「今日が雨である」と「今日傘が売れる」の確率を単純に掛けると、両者が密接に関係しているという事実を無視することになります。

掛け算してよいかどうか、独立性をきちんと確認する──これは実務でデータを扱うときに常に問われる視点です。

POINT

「独立なら掛け算」は確率計算の最強の武器のひとつ。ただし、独立性が成り立っている前提を忘れてはいけません。独立でないなら、次回学ぶ条件付確率の出番になります。

3. 「独立」と「排反」は別物

ここが本ページでもっとも大切なパートです。「独立」と「排反」は、まったく別の概念であることを、しっかり区別しましょう。混同しやすいので、何度も読み返してください。

排反の復習

前回学んだとおり、排反とは「2つの事象が同時には起こらない」関係でした。記号で書けば A∩B = ∅(空事象)、つまり P(A∩B) = 0 です。

独立と排反の比較

概念 意味 数式 サイコロでの例
排反 同時には起こらない P(A∩B) = 0 「偶数」と「奇数」
独立 互いの確率に影響しない P(A∩B) = P(A)×P(B) 1回目「偶数」と2回目「偶数」

排反かつ独立になることはほぼない

興味深いのは、排反な事象は、ほとんどの場合「独立ではない」という点です。排反だと P(A∩B) = 0 ですが、独立だと P(A∩B) = P(A) × P(B)。両方が成り立つには P(A) = 0 または P(B) = 0、つまりどちらかの確率が0でなければなりません。

これは直感的にも納得できます。「Aが起きた」ことがわかると「Bは絶対に起こらない(排反だから)」という強い情報が得られる──これは明らかにBの確率に影響しているので、独立ではないんです。

典型的な混同パターン

初学者がよくやってしまう間違いに、こんなものがあります。

CAUTION

サイコロを1回振る試行で、A=「偶数が出る」、B=「奇数が出る」とすると:

  • P(A) = 1/2、P(B) = 1/2
  • P(A) × P(B) = 1/4
  • でも実際には P(A∩B) = 0(偶数と奇数は同時に起こらない=排反)

1/4 ≠ 0 なので、AとBは独立ではない排反であって独立ではない典型的な例です。

「排反」「独立」「両方」「どちらでもない」──事象の関係には、いくつかのパターンがあります。問題を解くときは、「これは排反? それとも独立?」を最初に確認するクセをつけましょう。

4. 試行の独立性

ここまでは「事象の独立性」を扱ってきました。確率にはもう1つ、試行の独立性という似た概念があります。

試行の独立性とは

試行が独立とは、「ある試行の結果が、別の試行の結果に影響しない」関係のことです。

復元抽出と非復元抽出

袋から玉を取り出す場面で、戻すかどうかで試行の独立性が大きく変わります。

具体例で違いを確認

EXAMPLE

袋に赤玉3個、白玉2個(合計5個)が入っている。袋から玉を2回取り出して、両方とも赤玉が出る確率を求めたい。

(1) 復元抽出の場合:1回目で赤を取って戻すので、2回目も同じ条件で引く。

  • 1回目に赤が出る確率:3/5
  • 2回目に赤が出る確率:3/5(戻したので変わらない)
  • 両方赤の確率:3/5 × 3/5 = 9/25

(2) 非復元抽出の場合:1回目で赤を取り、戻さずに2回目を引く。

  • 1回目に赤が出る確率:3/5
  • 2回目に赤が出る確率:2/4 = 1/2(赤が1個減って袋には赤2個・白2個)
  • 両方赤の確率:3/5 × 1/2 = 3/10

復元なら 9/25 = 0.36、非復元なら 3/10 = 0.30。「戻すかどうか」だけで、確率が変わってしまうのがわかります。問題文に「戻して」「戻さずに」と書かれていたら、必ず注目してください。

POINT

復元抽出 → 試行は独立非復元抽出 → 試行は独立でない。試験では「戻さずに」という言葉に要注意です。

反復試行の独立性

コインを何度も投げる、サイコロを何度も振るような同じ試行を繰り返す場合は、反復試行と呼ばれます。反復試行は通常、各回の試行が独立であることが前提です。だからこそ、(5/6)³ や (1/2)² のように確率を掛け算できるんですね。

5. 練習問題

ここからは練習問題6問。独立性を使った典型問題を、難度を上げながら解いていきましょう。

問題 1 ─ サイコロを2回振る

サイコロを2回振るとき、「1回目が偶数、かつ2回目が3以上」になる確率を求めてください。

解答を見る

サイコロを2回振る試行は、各回が独立です。

  • P(1回目が偶数) = 3/6 = 1/2
  • P(2回目が3以上) = 4/6 = 2/3(3,4,5,6の4通り)

独立なので乗法定理で掛け算:

P(両方) = 1/2 × 2/3 = 2/6 = 1/3

問題 2 ─ コインの3連続表

公平なコインを3回連続で投げるとき、すべて表になる確率を求めてください。

解答を見る

各回のコイン投げは独立な試行です。1回ごとに表が出る確率は 1/2。

P(3回すべて表) = 1/2 × 1/2 × 1/2 = 1/8

全事象(HHH, HHT, …, TTT)は2³ = 8通り。すべて表は HHH の1通りなので 1/8。式と一致します。

問題 3 ─ 排反? 独立?

サイコロを1回振る試行で、A=「3が出る」、B=「5が出る」とします。

解答を見る

(1) 排反かどうか

「3が出る」と「5が出る」は同時には起こりません(サイコロを1回振るので結果は1つだけ)。よってA∩B = ∅、つまり排反です。

(2) 独立かどうか

独立かどうかは P(A∩B) = P(A) × P(B) を確認します。

  • P(A) = 1/6、P(B) = 1/6
  • P(A) × P(B) = 1/36
  • P(A∩B) = 0(排反だから)

0 ≠ 1/36 なので、独立ではない

この問題が示すように、排反な2つの事象は基本的に独立にはなりません。「排反だから独立」と早合点しないように。

問題 4 ─ 復元抽出と非復元抽出

袋に赤玉4個、白玉6個(合計10個)が入っています。次の2つの場合について、2回連続で赤玉を引く確率をそれぞれ求めてください。

解答を見る

(1) 復元抽出

戻すので袋の中身は変わらず、各試行は独立。

  • 1回目に赤:4/10 = 2/5
  • 2回目に赤:4/10 = 2/5(同じ確率)

P(両方赤) = 2/5 × 2/5 = 4/25 = 0.16

(2) 非復元抽出

1回目で赤を取った後、袋には赤3個・白6個(合計9個)が残る。

  • 1回目に赤:4/10 = 2/5
  • 2回目に赤(赤を1つ取った後の袋から):3/9 = 1/3

P(両方赤) = 2/5 × 1/3 = 2/15 ≒ 0.133

非復元のほうが確率が下がっています。1回目で赤を取った分、袋の中の赤の割合が少なくなるためです。

問題 5 ─ 製造ラインの不良品

ある工場の製造ラインで、製品が不良品になる確率は1個あたり0.02(2%)です。各製品の不良発生は独立とします。連続して3個の製品を検査するとき、次の確率を求めてください。

解答を見る

各製品の良品確率は 1 − 0.02 = 0.98。各回が独立なので、確率の掛け算が使えます。

(1) 3個とも良品

P(3個とも良品) = 0.98 × 0.98 × 0.98 = 0.98³ ≒ 0.9412

(2) 少なくとも1個は不良品

前回学んだ余事象の発想を使います。「少なくとも1個不良」の余事象は「3個とも良品」、つまり(1)で求めた値です。

P(少なくとも1個不良) = 1 − 0.9412 = 0.0588(約5.9%)

1個ずつなら2%の不良率でも、3個チェックすると約5.9%の確率で1個以上の不良に当たることになります。独立試行を繰り返すと、リスクは積み重なる──実務でも重要な感覚です。

問題 6 ─ ジョーカーを除いたトランプ

ジョーカーを除いた52枚のトランプから、戻さずに2枚連続で引きます。

解答を見る

非復元抽出なので、1回目を引いたあとは枚数と内訳が変わります。

(1) 2枚ともハート

  • 1枚目がハート:13/52 = 1/4
  • 2枚目もハート(1枚目でハートが1枚減ったので、ハート12枚 / 全51枚):12/51

P(2枚ともハート) = 1/4 × 12/51 = 12/204 = 1/17 ≒ 0.0588

(2) 2枚ともA

  • 1枚目がA:4/52 = 1/13
  • 2枚目もA(Aが1枚減って3枚 / 全51枚):3/51 = 1/17

P(2枚ともA) = 1/13 × 1/17 = 1/221 ≒ 0.0045

Aが2枚連続で出るのは、約0.45%──221回に1回くらい、なかなかレアなことだとわかります。

まとめ

第6章3回目の本ページ、ポイントを整理しておきましょう。

次回は条件付確率──「Aが起きたとき、Bが起きる確率」を扱います。今回学んだ独立性の知識が、条件付確率を理解する大きな助けになります。

さえちゃん
さえ

独立と排反の区別、しっかり押さえられたかな? ここを混同しなくなるだけで、確率の問題が一気に得意になるよ! 次回は条件付確率──「ある条件のもとでの確率」を考える、ちょっと不思議で面白い世界に入っていくよ!