賃金はどうやって決まるのか

How Wages are Set

3つの決まり方 ― 誰が賃金を動かしているのか

毎月の給料明細を見ながら、「この金額は、いったい誰がどうやって決めているのだろう」と考えたことはないでしょうか。会社が一方的に決めているようにも見えますが、実際には賃金には主に3つの力が働いています。

決まり方どう働くか具体例
労働市場の需要と供給人を雇いたい企業と、働きたい人の数のバランスで、相場が上下する人手不足の業種は時給が上がりやすい
春闘などの交渉労働組合と経営側が、毎年の賃上げ率について話し合う2026年の春闘の賃上げ率はおよそ5.26%
最低賃金という法律の下限国が「これを下回ってはいけない」と定める下限額2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円

この3つは、それぞれ独立して動いているわけではありません。最低賃金が土台となる下限を引き上げ、そのうえで需要と供給が相場をならし、春闘のような交渉が業界全体の相場観を後押しする。3つの力が重なり合って、私たちが受け取る金額が決まっていきます。

「相場」はどう作られるか ― 人手不足なら上がる

3つの力のうち、日々の暮らしにいちばん実感として近いのが、需要と供給による相場です。飲食店やコンビニで、いつも同じ時給の求人が貼られているわけではないことに気づいた人もいるでしょう。働きたい人より、雇いたい企業のほうが多い状態では、企業どうしが人を奪い合い、時給が上がっていきます。

逆に、応募したい人のほうが多い、いわゆる買い手市場(雇う側が有利な労働市場の状態)では、企業は無理に賃金を上げなくても人を集められるため、相場は上がりにくくなります。人手不足そのものの中身については、雇用と人手不足で詳しく取り上げます。

つまり賃金の相場は、誰か1人が決めているのではなく、無数の企業と働き手が「この条件なら雇う・働く」と判断した結果として、市場の中で自然に形づくられていくものです。

交渉の存在 ― 春闘、そして個人の交渉

毎年春になると、「春闘」というニュースを目にします。春闘(春季生活闘争。労働組合が企業に賃上げなどを要求し、経営側と交渉する毎年恒例の動き)は、多くの企業で足並みをそろえて行われるため、社会全体の賃上げの相場観を作る役割を持っています。2026年の春闘の賃上げ率はおよそ5.26%でした。

ただし、交渉は労働組合と経営側の間だけで起きているわけではありません。転職の面接で希望年収を伝えることも、上司に昇給を相談することも、広い意味では同じ「交渉」です。会社の規模で自動的に決まる金額に見えても、実際には需要と供給、業界全体の相場、そして一人ひとりの交渉が積み重なって、最終的な金額に落ち着いています。

もっと深く ― 同じ仕事でも賃金が違う理由DEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

企業規模・地域・雇用形態という3つの差

同じような仕事をしていても、勤め先や住んでいる場所によって、賃金には差が生まれます。代表的な要因は3つです。1つ目は企業規模。一般に、大きな企業は利益の規模も大きく、賃金に回せる原資が多い傾向があります。2つ目は地域。最低賃金は都道府県ごとに決められており、2025年度は最高の東京が1,226円、最低の県が1,023円と、200円を超える開きがあります。3つ目は雇用形態。正社員と、パート・アルバイトなどの非正規雇用とでは、契約の期間や責任の範囲が異なり、それが賃金の差として表れます。

どの差にも、地価や物価水準の違い、企業が負う責任の重さの違いなど、それぞれに背景があります。「同じ仕事なら同じ賃金であるべきだ」という考え方と、「条件が違えば賃金が違うのは自然だ」という考え方の両方があり、この講座では、どちらが正しいかを決めつけずに、差が生まれる仕組みそのものを押さえておきます。

考えてみるTHINK
Q1

自分の賃金は、3つの決まり方のどれで動いてきたでしょうか?

ヒント: 転職・昇給交渉・最低賃金引き上げのニュースなど、自分の給料が変わった出来事を振り返ってみましょう。

Q2

「賃金は上がるのを待つもの」でしょうか、それとも「動かしにいくもの」でしょうか?

ヒント: 春闘のように社会全体で動く賃上げと、個人の転職や交渉による賃上げ、それぞれの効き方の違いを考えてみましょう。

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