「日本の借金は大丈夫なのか」を考える

Is Japan's Debt OK?

経済のニュースで、「日本の借金は大丈夫なのか」という話題を目にしたことがあるかもしれません。この章では、国の予算・税金・国債の仕組みを順に見てきました。最後に、この問いそのものを正面から取り上げます。先に結論めいたことを言っておくと、この講座はこの問いに「大丈夫」とも「危険」とも答えません。経済の専門家の間でも意見が分かれているテーマだからです。ここでは、両方の立場の根拠を並べたうえで、自分で状況を追いかけるための数字を渡します。

「心配だ」と考える人の根拠

まず、日本の借金を心配する立場の根拠を見ておきます。国債残高と政府債務で見たとおり、日本の政府債務はGDP比で世界最高水準にあります。IMFの推計では、2026年に一般政府債務残高がGDP比204.4%に達する見通しで、主要先進国の中でもっとも高い水準です。

次に、金利が上がると利払いが増えるという点です。2026年度の利払費は約13兆円で、予算を組む際に見込む金利(積算金利)を2.0%から3.0%に引き上げたことで、前年度より2.5兆円ほど増えました。長期金利(10年国債利回り)そのものも約2.8%と、31年ぶりの高水準にあります。金利のある世界に戻ったことで、借金の重さが数字に表れ始めています。

さらに、社会保障を中心とする支出は、高齢化が進むにつれてこれからも増えていく見込みです。収入を大きく上回るペースで支出が増え続ければ、借金はさらに積み上がっていくという懸念が、心配する立場の中心にあります。

「ただちに危機ではない」と考える人の根拠

一方で、同じ数字を見ても、ただちに危機とは考えない立場にも根拠があります。1つ目は、日本の国債はほぼ自国通貨(円)建てで発行されているという点です。外貨での返済を迫られる心配が小さいという整理は、財政の議論でよく指摘される一般的な見方です。

2つ目は、保有者の9割以上が国内だという点です。財務省の集計によれば、国債の海外保有比率はおよそ6.8%にとどまり、日本銀行が約49%を保有しています。残りの多くも、国内の銀行・保険会社・年金基金など、日本国内の機関投資家が持っています。

3つ目は、政府にも資産があるという点です。国債残高と政府債務で見たとおり、負債から政府の資産を差し引いた純債務ベースで見ると、GDP比134.3%という推計もあります。借金の総額(グロス)だけでなく、資産を差し引いた姿(ネット)で見るべきだ、という指摘です。

この講座の答え方 ― 監視する数字リスト

「心配だ」という根拠も、「ただちに危機ではない」という根拠も、それぞれに一理あります。どちらか一方が正解というものではありません。この講座では、どちらの立場が正しいかを予言する代わりに、これから自分の目で追いかけていくと状況の変化がつかめる、5つの数字を渡します。

監視する数字現在地出典
長期金利(10年国債利回り)約2.8%(31年ぶり高水準)市場実勢、2026年8月
利払費約13兆円(積算金利3.0%)財務省、2026年度
プライマリーバランス一般会計で28年ぶり黒字化財務省、2026年度当初予算
日銀の国債保有比率約49%(3年半ぶりに5割を下回る)財務省・日本銀行、2025年12月末
インフレ率(消費者物価指数)重要指標ページを参照総務省、毎月発表

金利と国債プライマリーバランスと金利上昇で見た数字が、この5つに集約されています。長期金利が急に跳ね上がっていないか、利払費が予算をどれだけ圧迫しているか、プライマリーバランスが黒字を保てているか。ニュースでこれらの数字を見かけたときに、このページに戻ってくれば、今どちらの立場に近い状況なのかを、自分の頭で判断する材料になります。

もっと深く ― 信認が揺らぐとどうなるかDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

「もしも」のシナリオを知っておく

「ただちに危機ではない」という根拠が崩れる場合があるとすれば、それは信認(国が借金をきちんと返していけると、貸し手からどれだけ信じてもらえているかということ)が揺らいだときです。一般的に語られる経路はこうです。国債の買い手が減ったり売りが増えたりすると、国債の価格が下がり、その裏返しとして金利が急に上がります。金利が上がれば、国はより高い利息を払って借金をしなければならなくなり、財政はさらに苦しくなります。同時に、その国の通貨が売られて安くなり、輸入品の値段が上がって物価が上昇しやすくなる、という連鎖も語られます。

これは、ある国で必ず起きると決まった未来ではなく、「信認が揺らぐとこういう経路をたどりうる」という一般的な仕組みの説明です。特定の国の実例を挙げて煽ることが、この講座の目的ではありません。大切なのは、このシナリオが存在することを知ったうえで、上の監視リストの数字が、その兆候をいち早く映す場所だと理解しておくことです。

考えてみるTHINK
Q1

普通国債残高の約1,145兆円を、日本の総人口(およそ1.24億人)で単純に割ると、1人あたりおよそ900万円という数字が出てきます。「国の借金は1人あたり約900万円」という報道の仕方には、どんな問題がありうるでしょうか?

ヒント: 国債残高と政府債務で見た、誰が保有しているかという視点を思い出してみましょう。

Q2

監視する数字リストから1つを選び、最新の値を一次資料で調べてみましょう。このページの数字と、どれくらい変わっているでしょうか?

ヒント: 財務省や日本銀行のウェブサイトでは、四半期や月ごとに数字が更新されています。

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