金利と国債
Rates and JGBsここまで、預金の金利や住宅ローンの金利など、私たちの暮らしに近い金利を見てきました。金利が働く場所は、そこだけではありません。国が発行する国債にも、金利がついています。この章の締めくくりとして、金利と国債の関係を整理します。
国債にも金利がある ― 市場が決める「長期金利」
国債は、満期になれば元本が返され、それまでの間は毎年利子を受け取れる仕組みになっています。この国債の利回りのうち、満期までの期間が長いもの(主に10年物の国債)の利回りを長期金利(満期までの期間が長い国債の利回り。市場での売買によって毎日動く)と呼びます。
長期金利は、2026年8月時点でおよそ2.8%です。これは31年ぶりの高い水準です(市場実勢、2026年8月)。
政策金利は、日本銀行が会合で「これくらいにする」と直接決める金利でした。これに対して長期金利は、日銀が直接決めるものではありません。国債を売り買いする投資家たちの取引によって、毎日、市場で価格と利回りが形成されます。「これから物価が上がりそうだ」「金利がもっと上がりそうだ」と多くの投資家が考えれば、長期金利は上がりやすくなります。
| 金利 | 水準 | 決め方 |
|---|---|---|
| 政策金利 | 1.0%程度(2026年6月) | 日本銀行が会合で直接決める |
| 長期金利(10年国債利回り) | 約2.8%(2026年8月・31年ぶりの高水準) | 市場での売買によって決まる |
出典: 日本銀行、市場実勢(2026年8月)
政策金利が1.0%程度であるのに対し、長期金利はおよそ2.8%まで上昇しています。この差には、「これから金利はさらに上がっていくのではないか」という市場の見方が織り込まれている、と説明されることがあります。もっとも、これは今後の金利を断定するものではなく、あくまで市場の現時点での見方の一つです。
金利が上がると政府の利払いが増える ― 利払費、2026年度は約13兆円
金利が上がると何が起きるのかで見た表には、影響を受ける立場のひとつとして「政府」も入っていました。ここでは、その中身を具体的な数字で見ていきます。
国が発行した国債に対して支払う利子の合計額を利払費(国が発行した国債に対して支払う利子の合計額)と呼びます。2026年度の利払費は、およそ13兆円です(財務省)。
この金額を見積もるとき、財務省は将来の金利がどのくらいになるかを仮定する必要があります。2026年度の予算では、この見積もりに使う金利(積算金利)を2.0%から3.0%に引き上げました。その結果、利払費は前年度に比べておよそ2.5兆円増えています。
国の借金の残高が大きいほど、金利が少し動くだけでも、利払費の増減額は大きくなります。家計でいえば、住宅ローンの残高が大きい人ほど、金利が1%動いたときの返済額の変化が大きいのと同じ理屈です。
2026年度の一般会計では、国債費全体で31.3兆円が計上されています。このうち利払費のおよそ13兆円は、国債費の4割強にあたります。残りは、過去に発行した国債を返す元本の支払いです。国の収入と支出全体の中で、この国債費がどのくらいの重みを持っているのかは、政府の収入と支出で詳しく見ていきます。
債券の価格と金利は逆に動く ― 古い国債はなぜ安くなるのか
金利が上がるという現象には、もう一つ、意外な側面があります。それは、すでに発行されている国債の価格が下がる、ということです。
額面100万円、利率1%の国債を持っているとします(説明のための架空の例です)。毎年1万円の利子を受け取れる計算です。ところが、その後に新しく発行される国債の利率が2%に上がったとしましょう。新しい国債を100万円で買えば、毎年2万円の利子を受け取れます。
こうなると、古い利率1%の国債は、新しい利率2%の国債と比べて見劣りします。もし手放そうとするなら、額面どおりの100万円では買い手がつきにくくなり、それより安い価格をつけなければ売れなくなります。
これが、金利が上がると、すでに発行されている国債の価格は下がるという関係です。逆に、金利が下がれば、古い高い利率の国債の魅力が増し、価格は上がります。金利と国債の価格は、シーソーのように逆方向に動くのです。
国債を保有しているのは、日本銀行だけではありません。国内の銀行・保険会社・年金基金なども、資産運用の一環として国債を保有しています。長期金利が上がって国債の価格が下がれば、こうした機関が抱える国債の評価額にも影響が及びます。国債の値動きは、日々のニュースの数字だけでなく、私たちが預けている預金や加入している保険・年金の運用にも、間接的につながっているのです。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
国債の、およそ半分を日本銀行が持っている
日本で発行されている国債は、誰が保有しているのでしょうか。財務省の集計によると、2025年12月末時点で、日本銀行が保有する割合はおよそ49%です(財務省・日本銀行)。これは、3年半ぶりに5割を下回った水準です。
なぜ、日銀の保有比率が下がってきたのか
日本銀行は、2024年8月から、保有する国債の買い入れ額を段階的に減らしています。これまで大量に国債を買い入れてきた側が買う量を減らせば、市場に出回る国債の需給バランスは変わります。長期金利が上昇してきた背景には、こうした日銀の動きも関係していると考えられています。
買い手が変われば、国債の「消化」のされ方も変わる
発行された国債を、市場が無理なく買い取っていくことを消化(発行された国債を、市場が無理なく買い取っていくこと)と呼びます。日銀の保有比率が下がるということは、これまで日銀が担ってきた買い手としての役割の一部を、国内の銀行・保険会社・年金基金や、海外の投資家など、他の主体が引き受けることを意味します。買い手の顔ぶれが変われば、国債がどのような条件で消化されていくかにも変化が生じうる、というのが一般的な見方です。
「日銀が国債の半分近くを持っている」という事実が、日本の財政にとってどんな意味を持つのかは、国債とは何かから始まる、政府の財政を扱うテーマの中であらためて考えていきます。
長期金利の上昇は、誰の得で誰の負担になるでしょうか?
ヒント: 新しく国債を発行する政府、すでに国債を持っている投資家、これから住宅ローンを組む人など、複数の立場に分けて考えてみましょう。
「長期金利が31年ぶりの高さ」というニュースを、借りる側・貸す側の両方から読んでみましょう。
ヒント: 借りる側にとっての意味と、貸す側(国債を買う側)にとっての意味は、同じ出来事でも違って見えるはずです。