政府の収入と支出
Government Budget国の家計簿を開く ― 一般会計122.3兆円
家計・企業・政府・銀行の役割で見たとおり、政府は税金を集め、道路や学校、年金といった公共サービスに配りなおす役割を担っています。ここからは、その政府の「家計簿」にあたる予算を、具体的な数字で見ていきます。
国の基本的な収入と支出をまとめた会計を一般会計(国の基本的な収入と支出をまとめた会計。このほかに、特定の目的のために使う特別会計もある)と呼びます。2026年度の一般会計当初予算は122.3兆円です(財務省)。これは、2年連続で過去最大の規模です。
名目GDP(国内で1年間に生み出される付加価値の総額)はおよそ600兆円ですから(内閣府、2024年度)、国の予算はそのおよそ5分の1にあたる規模だということになります。会社員1人分の給料に例えるなら、年収の5分の1ほどを、政府という「家計」が1年間で使っている、というイメージです。
もちろん、政府の家計簿は、私たちの家計簿とまったく同じではありません。政府には、税金を集める力や、国債を発行して借金をする力など、一般の家庭にはない手段があります。それでも、「収入があり、支出がある」という基本の構造は同じです。家庭の家計簿と同じように、この予算にも「収入」と「支出」があります。次の2つの節で、それぞれの中身を見ていきましょう。
収入はどこから ― 税収と国債発行
122.3兆円という収入は、どこから来ているのでしょうか。柱となるのは税金です。2026年度の税収見込みは83.7兆円で、過去最高の水準です(財務省)。
ただし、税収だけでは歳入の全額をまかなえません。理由は単純で、支出のほうが収入より大きいからです。この差を埋めるために、国は借金をしています。2026年度に新たに発行する国債は29.6兆円で、歳入のおよそ4分の1を占めます(財務省)。
| 項目 | 金額 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 税収見込み | 83.7兆円(過去最高) | 財務省、2026年度 |
| 新規国債発行額 | 29.6兆円(歳入の約4分の1) | 財務省、2026年度 |
税収と新規国債を合わせても、収入全体には届きません。残りは、税外収入など他の収入でまかなわれています。国の収入のおよそ7割は税金、およそ4分の1は借金という構成です。収入の4分の1近くを借金でまかなっているという点は、家庭の家計簿ではあまり見ない構図かもしれません。
この「新規国債29.6兆円」という数字の意味や、国の借金の全体像については、国債とは何かで詳しく見ていきます。
支出はどこへ ― 社会保障・国債費・地方交付税
集めたお金は、どこに使われているのでしょうか。2026年度の歳出でとくに大きいのは、次の3つです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 社会保障関係費 | 39.1兆円 |
| 国債費 | 31.3兆円 |
| 地方交付税交付金等 | 20.9兆円 |
出典: 財務省、2026年度当初予算
この3つを合わせると91.3兆円になり、歳出全体122.3兆円のおよそ4分の3を占めます。中でも最も大きいのが社会保障関係費39.1兆円で、歳出全体の3割を超えています。年金・医療・介護などに使われるお金です。地方交付税交付金等は、地域ごとの財政の差を埋めるために、国から地方自治体に配られるお金です。
残る国債費31.3兆円は、過去に発行した国債の返済と利子の支払いにあてるお金です。このうち利子の支払い(利払費)はおよそ13兆円で、残りは元本の返済に充てられています。金利が上がると、この利払費がどう増えていくかは、金利と国債で詳しく見たとおりです。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
予算は年度の途中でも組み直される
ここまで見てきた122.3兆円は、当初予算(年度が始まる前に、国会で決められる、その年度の基本となる予算)です。日本の会計年度は4月に始まりますが、実際には、年度の途中で予算が追加されることがよくあります。
補正予算とは
台風や地震などの災害、景気の落ち込みへの対応など、当初予算を決めた時点では見込んでいなかった出来事が起きたとき、国会で新たに議決される予算を補正予算(年度の途中で、当初予算に追加して組まれる予算)と呼びます。
補正予算の財源にも、税収だけでは足りない場合があります。その場合は、新たに国債を発行して財源にあてることがあります。当初予算の29.6兆円という新規国債発行額は、あくまで年度の出発点の数字であり、年度の途中で積み増される可能性がある、という点も知っておくとよいでしょう。
当初予算と補正予算を合わせたものを最終予算(当初予算に、年度の途中で成立した補正予算を加えた、その年度の最終的な予算の総額)と呼ぶこともあります。予算のニュースを読むときは、いま話題になっている金額が当初予算のことなのか、補正予算を含めた金額なのかを区別すると、数字の意味を取り違えにくくなります。
ニュースで「今年度の予算総額は◯◯兆円に膨らんだ」と報じられるとき、その多くは、当初予算に補正予算が上乗せされた金額を指しています。この講座で扱う122.3兆円は、あくまで年度の出発点となる当初予算の数字だという点を覚えておいてください。
政府の家計簿を1つの家庭に例えると、どんな家計に見えるでしょうか?その例えの限界はどこにあるでしょうか?
ヒント: 家庭は基本的に「稼いだ範囲で暮らす」ことが前提ですが、政府には家庭と違う点もあります。何が同じで何が違うか考えてみましょう。
支出の中で、自分がいま直接お世話になっている項目はどれでしょうか?
ヒント: 社会保障・教育・道路・警察など、歳出の内訳を思い浮かべながら、自分の生活とのつながりを探してみましょう。