クッキーってなに?

Cookies

クッキーとは ― サイトがそっと渡していく小さなメモ

Webサイトを見ていると、ときどき「このサイトはクッキーを使用します」という表示を目にすることがあります。クッキーと聞いてお菓子を思い浮かべた方も多いと思いますが、こちらは別物です。クッキーとは、Webサイトがあなたのブラウザに向けてそっと渡していく、小さなメモのことです。

たとえるなら、よく行くお店で渡される会員カードのようなものです。一度お店に行くとカードを渡され、次に来店したときそのカードを見せると、お店の人は「いつもの方ですね」とすぐに分かります。クッキーもこれと同じ仕組みです。あるサイトを訪れると、サイト側があなたのブラウザにメモを渡し、次に同じサイトを訪れたとき、ブラウザがそのメモを見せることで「前にも来た人だ」と分かるのです。

ここで大事なのは、カード(メモ)がどこに保管されているか、という位置関係です。会員カードは、お店ではなくあなたの財布の中に入っていますよね。クッキーも同じで、サイトのサーバーの中にではなく、あなたのパソコンの中に保存されています。サイト側は、あなたが次に訪れたときにそのメモを見せてもらって、初めて「ああ、この方ですね」と分かる。クッキーの正体を知ると、なぜログインした状態が続くのか、なぜ広告が自分好みに変わるのか、そのからくりが見えてきます。

クッキーがあるから便利なこと

クッキーのおかげで、私たちは日々いろいろな手間を省けています。一度ログインしたサイトを開き直しても、毎回パスワードを聞かれずにログインしたままでいられるのはクッキーのおかげです。通販サイトで買い物かごに商品を入れたまま別のページを見に行っても、カートの中身が消えないのもクッキーのおかげ。動画サイトで途中まで見た番組を、翌日開いたときに「続きから再生」できるのも同じ仕組みです。

ここで少し想像してみてください。もしクッキーというものが世の中に存在しなかったら、どうなるでしょうか。サイトはあなたのことを覚えていられないので、ページを移動するたびに、あなたは毎回はじめましての初対面として扱われます。買い物かごの中身は消え、ログインは1ページごとにやり直し、見ていた動画は毎回頭から。便利さの裏側には、この小さなメモがひとつ働いています。

ここ数年、どのサイトを開いても最初に「このサイトはクッキーを使用します。同意しますか?」というバナーが出るようになりました。あれを鬱陶しく感じている方も多いと思いますが、あれにはきちんとした理由があります。

クッキーは便利な仕組みである一方、使い方によっては個人の行動記録にもなり得ます。どのサイトを、いつ、どんな順番で見て回ったか——これが蓄積されると、その人の興味関心がかなり細かく分かってしまいます。そこで「サイトはクッキーを使う前に、必ず本人に確認を取りなさい」というルールが法律で定められるようになりました。最初にこの考え方を強く打ち出したのはヨーロッパ(EU)で、その流れがいま世界中に広がっている、というのが同意バナーが増えた背景です。

なので、基本的には慌てて何かを選ぶ必要はありません。「すべて同意する」を押さなくても、たいていのページはそのまま見られます。ログインなど、サイトを機能させるために最低限必要なクッキーは、同意の有無にかかわらず動いていることがほとんどです。

もっと深く ― 追いかけてくる広告の正体DEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、パソコン歴の長い方ほど「そうだったのか」となる話です。

あの靴の広告が、どこまでも追いかけてくる理由

通販サイトで一度靴を眺めただけなのに、その後ニュースサイトを開いても、まったく別のブログを読んでいても、同じ靴の広告が出てくる——そんな経験はありませんか。これは偶然ではなく、仕掛けがあります。

正体はサードパーティクッキーと呼ばれる、少し変わったクッキーです。ふつうのクッキーは「いま見ているサイト自身」があなたに渡すメモでしたが、サードパーティクッキーは違います。渡してくるのは、そのサイトに間借りしている広告会社です。多くのサイトが同じ広告会社の広告枠を貸しているため、その広告会社は、あなたがどのサイトを訪れても同じメモを見せてもらえます。結果として、靴を見たサイトも、ニュースサイトも、ブログも——バラバラに見えていたあなたの行動が、広告会社側からは1本の線としてつながって見えているのです。

ただし、ここは現在まさに変わりつつあるところです。プライバシーへの懸念から、主要なブラウザはこのサードパーティクッキーの仕組みを廃止したり、大きく制限したりする方向に動いています。もし気になる方は、検索エンジンの仕組みと合わせて読むと、自分の情報がどう扱われているかの全体像がつかみやすくなります。「クッキー=悪いもの」と単純に言い切れるほど話は簡単ではなく、いまはちょうど仕組みが移り変わっていく途中の時期にある、と捉えておくとよいでしょう。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。

受講者
「クッキーを削除しますか」って出てきたことがあるんですけど、削除したらまずいですか?
講師講師
まずくはありませんよ。会員カードを手放すようなものなので、削除するとそのサイトでは一度ログインし直しになったり、カートの中身が消えたりします。ただし壊れるわけではなく、また新しいメモが渡されるだけです。
受講者
同意のバナー、正直いつも読まずに閉じちゃってます……。それってまずいですか?
講師講師
それで大丈夫な方がほとんどです。基本のクッキーはサイトを動かすための会員カードだと思ってください。気になるときだけ、詳細設定を開いて確認する——それくらいの距離感で十分です。
講師メモ ― 現場から

クッキーの話をすると、必ず何人かが「お菓子のクッキーと関係あるんですか」と聞いてきます。関係ないと答えると、教室が少し笑いに包まれます。この小さな脱線が、実は「知らない言葉を怖がらなくていい」という空気を作るのに役立っていて、私は毎回あえて拾うようにしていました。

同意バナーについては、「全部拒否したほうが安全なんですよね?」と身構える方がとても多いです。そのときは「会員カードを受け取るかどうかの話であって、危険かどうかの話ではないんですよ」と伝えると、みなさんすっと肩の力が抜けるようでした。

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