フォルダの名前の付け方 ― 10、20、30の魔法
Folder Namingフォルダは、増える
ファイルとフォルダを覚えた人は、うれしくなってフォルダをどんどん作ります。それ自体は正しい成長です。ところが数か月後、必ず同じことが起きます。どこに何を入れたのか、分からなくなるのです。
「仕事」「仕事関係」「仕事2」「新しいフォルダー」「新しいフォルダー(2)」……。心当たりはありませんか。フォルダは作るのは一瞬ですが、名前を適当につけると、あとで探す時間が延々と増えていきます。整理術の勝負は、フォルダを作る瞬間の名前の付け方で決まります。
頭に数字をつける ― 10、20、30の魔法
私が講座でおすすめしてきた方法は、とてもシンプルです。フォルダ名の頭に、10、20、30……と数字をつける。これだけです。
10_見積書
20_請求書
30_納品書
40_会議資料
50_写真なぜ効くのか。パソコンはフォルダを名前の順に並べるからです。数字をつけなければ五十音順・アルファベット順に並び、自分が使いたい順番にはなりません。頭に数字をつけた瞬間、並び順を自分で設計できるようになります。よく使うものを若い番号にすれば、いつも一番上にいてくれます。
そして、1、2、3ではなく10、20、30と「10刻み」にするのがこの方法の心臓部です。理由は、あとから間に差し込めるから。「見積書と請求書の間に、契約書のフォルダが欲しい」となったら、15_契約書を作ればいい。1、2、3で振っていたら、差し込むたびに全部の番号を振り直すことになります。10刻みは、未来の自分への余白なのです。
「15」が気持ち悪くなる問題 ― 見直しは年1回
ところが、この方法を数か月使うと、新しい悩みが生まれます。差し込んだ「15」が、だんだん気持ち悪くなってくるのです。10、15、20、30……。並びの美しさが崩れている。いっそ全部振り直して、きれいな10刻みに戻したい——。
その気持ちは分かります。でも、こらえてください。番号の振り直しは、フォルダの並びが変わるということです。手が覚えた「あの位置にあのフォルダ」という感覚が、全部リセットされてしまいます。美しさのために使い勝手を壊すのは本末転倒です。
だからルールはこうです。基本の構造は変えない。見直しは、年に1回だけ。年末や年度末に、1年分の「15」や「25」を眺めて、必要ならそこで初めて振り直す。不思議なもので、これを続けていると、数字の付け方が自分の中でルール化されてきて、そもそも差し込みが減っていきます。整理術は、道具ではなく習慣なのです。
区切りはアンダースコア「_」
数字と名前の間の区切りには、アンダースコア(underscore = 下線。「10_見積書」の「_」)を使います。キーボードでは、日本語入力をオフにして、Shiftキーを押しながら「ろ」のキー(右下、Shiftの左隣)です。
ここにひとつ、落とし穴があります。日本語入力がオンのまま打つと、見た目のそっくりな全角のアンダースコア「_」が入力されてしまうのです。「_」と「_」。画面上ではほとんど見分けがつきません。ところがパソコンにとっては完全に別の文字なので、並び順が乱れたり、あとでファイル名を検索しても見つからなかったり、静かな事故が起きます。記号を打つときは、日本語入力をオフ。これを合言葉にしてください。
「区切りなら、ハイフン(-)でもいいのでは?」と思った方へ。実は「フォルダ名の区切りはアンダースコア、ハイフンは避ける」という流儀には、ちゃんと技術的な理由があります。3つ挙げます。
理由1 ― そっくりさんが多すぎる
アンダースコアのそっくりさんは、全角の「_」くらいです。ところがハイフンには、長音「ー」、全角ハイフン「-」、マイナス「−」、ダッシュ「―」と、そっくりさんが大勢います。しかも最悪なことに、日本語キーボードでは同じキーが、日本語入力オンだと長音「ー」になる。「10-見積」のつもりが「10ー見積」になっても、見た目ではまず気づけません。全角アンダースコアの事故より、はるかに発見が困難です。
理由2 ― Windowsの並べ替えがハイフンを特別扱いする
Windowsの名前順の並べ替えには、ハイフンを「無いもの」として扱うことがあるという古い仕様が残っています。せっかく数字で設計した並び順が、ハイフンのせいで理屈の見えない崩れ方をすることがあるのです。アンダースコアは普通の文字として扱われるので、並びが安定します。
理由3 ― コマンドの世界では、先頭のハイフンは「命令の一部」
電源のページで紹介した黒い画面(コマンドプロンプト)の世界では、「-」や「/」で始まる文字は命令のオプション(追加の指示)として解釈されます。ハイフンで始まる名前のファイルは、命令の一部と間違われて、消すのにも一苦労する有名なトラブルの種です。いまは関係なくても、ExcelからPythonへ、と進んでいくと必ずこの世界に出会います。アンダースコアの習慣は、未来への保険でもあるのです。
ただし、Webの世界はハイフン文化
面白いことに、ホームページのアドレス(URL)の世界では、逆にハイフンが主流です。このページのアドレスにも「folder-naming」とハイフンが入っています。場所によって流儀が違う——これもコンピュータの世界の面白さです。フォルダ名はアンダースコア、URLはハイフン。そう覚えておけば大丈夫です。
教室のひとこま
このテーマを教えるとき、教室で毎回のように起きるやりとりを。
講師「10、20、30とつけましょう」と教えると、教室はすんなり進みます。荒れるのはアンダースコアです。「_」のつもりが「_」や「‗」になっている受講者が、毎回必ず何人もいる。机間を回って、ひとりずつ画面を覗いて直していく——この地味な時間が、この単元の本体だったと言ってもいいくらいです。
それから「15」問題。差し込みの便利さを教えると、数か月後に「並びが気持ち悪くなってきたので全部振り直していいですか」と聞かれます。答えはいつも同じでした。「構造は変えない。見直しは年に1回だけ」。ルールは道具より長持ちします。