ごみ箱の操作を覚えよう
Recycle Binごみ箱は「捨てる箱」ではなく「保留箱」
デスクトップの隅に、ごみ箱のマークがあるのに気づいていますか。名前だけ見ると「もう捨てるためのもの」に思えますが、実際の役目は少し違います。パソコンでファイルを削除しても、その瞬間に消えてなくなるわけではありません。まず、いったんこのごみ箱に移されるだけです。
イメージは、家庭のごみ箱そのものです。台所のごみ箱に何かを捨てても、収集日までは箱の中にあります。「やっぱりまだ使う」と思えば、収集車が来るまでは拾い直せますよね。パソコンのごみ箱もまったく同じ考え方で作られています。削除という操作は、実は「ごみ箱へ移す」と「ごみ箱を空にする」という2段階に分かれているのです。
この2段階のおかげで、削除は思っているより安全な操作になっています。「間違えて消してしまった」という失敗の多くは、ごみ箱を確認するだけで取り返しがつきます。まずはこの安心設計を頭に入れてから、実際の操作に進みましょう。
削除のしかた
練習には、メモ帳ではじめての文書保存で作った練習用のファイルがちょうどいい材料です。あれを実際に削除してみましょう。まだ作っていない方は、先にそちらのレッスンで練習ファイルを用意しておくと、このあとの手順がそのまま試せます。
削除には、いくつものやり方があります。ファイルを右クリックして出てくるメニューから「削除」を選ぶ方法、ファイルを選んだ状態でキーボードのDeleteキーを押す方法、そしてファイルをマウスでつかんでごみ箱のアイコンまでドラッグする方法。どれを使っても、たどり着く結果は同じで、ファイルはごみ箱へ移動します。代表として、いちばん使う頻度の高い右クリックの手順を紹介します。
- 削除したいファイルの上にマウスカーソルを合わせ、右クリックします。
- 出てきたメニューの中から、「削除」をクリックします。
- ファイルがその場から消え、デスクトップのごみ箱アイコンの絵柄が「空」から「紙が入った」状態に変わります。
ごみ箱アイコンの見た目が変わるのは、地味に見えて実は大事なサインです。「いま、中に何か入っていますよ」という合図なので、覚えておくと安心です。
元に戻す
削除した直後に「やっぱり必要だった」と気づいても、慌てる必要はありません。デスクトップのごみ箱アイコンをダブルクリックして中を開き、戻したいファイルを見つけたら右クリックして、「元に戻す」をクリックします。これだけで手続きは完了です。
ここで初心者の方がよくつまずくのが、「元に戻す」の意味です。ファイルはもともと置いてあった場所へ、そのまま帰っていきます。デスクトップにあったものはデスクトップへ、フォルダの中にあったものはそのフォルダの中へ、です。ごみ箱を開いた画面の上に戻ってくるわけではないので、「元に戻したはずなのに、どこにも見当たらない」と焦ってしまう方が少なくありません。落ち着いて、削除する前にどこに置いてあったかを思い出してみてください。ちゃんと、そこにいます。
空にする
ごみ箱の中身をまとめて片づけるには、デスクトップのごみ箱アイコンを右クリックし、「ごみ箱を空にする」をクリックします。これが、家庭のごみ箱でいう収集日にあたる操作です。一度空にしてしまうと、普段の操作では基本的に取り戻せません。
ここで、注意しておきたいことが2つあります。ひとつは、キーボードのShiftキーを押しながらDeleteキーを押す削除です。この組み合わせは、ごみ箱という保留箱を経由せず、その場で直接消してしまいます。慌ただしく作業していて指がうっかり触れてしまうと、拾い直すチャンスがないまま消えてしまうので、意識して使う場面だけに留めておくのが無難です。
もうひとつは、USBメモリなど外部記憶装置(パソコン本体の外にある記憶用の機器)に入っているファイルです。こうした場所で削除すると、パソコンのごみ箱には入らず、その場で消えてしまうことがあります。「デスクトップで消したときは戻せたのに、USBメモリでは戻せなかった」という声を教室でもよく聞きますが、これは失敗ではなく、そういう仕組みだからです。
ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、パソコン歴の長い方ほど「そうだったのか」となる話です。
消しゴムではなく、目次の1行を消しているだけ
ごみ箱を空にしたとき、パソコンの中では何が起きているのでしょうか。実は、ファイルの中身を消しゴムでこすって消しているのではありません。パソコンは、本にたとえるなら「目次」からその行を消しているだけです。本文のページ自体は、その場ではまだ残っています。
目次に載っていないページは、読者からは「存在しない」ように見えます。だからパソコンも「このファイルはもうない」という顔をします。でもページそのものは、別の新しいデータが上書きするその瞬間まで、ディスクの上に残り続けているのです。
だから「復元ソフト」という商売が成り立つ
この仕組みがあるおかげで、「消えたはずのファイルを取り戻す」ための復元ソフトという商品が世の中に存在します。目次から消えただけで本文が残っているなら、目次を頼らずページを直接探しにいけば、まだ読める可能性があるからです。
パソコンを手放すときは、「空にした」では足りない
この事実には、もうひとつ大事な意味があります。パソコンを人に譲る、売る、廃棄する——そんなとき、「大事なファイルは全部削除して、ごみ箱も空にしたから安心」と思ってしまいがちですが、それだけでは不十分だということです。本文のページ自体は残ったままなので、専用の消去ソフトやサービスを使って、上書きまで含めてきちんと処分する必要があります。ごみ箱を空にする操作は、あくまで日常の片づけのためのものだと覚えておいてください。
教室のひとこま
最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。
講師
講師「元に戻す」の行き先が分からなくなる方は、本当に多いです。ごみ箱を開いた画面の中で戻ってくると思い込んでいる方がほとんどなので、私は「戻る場所は、消す前にいた場所ですよ」と、操作の前に先回りして一言添えるようにしていました。
「空にする」の説明をすると、必ず「じゃあパソコンを売るときはどうすればいいんですか」という質問が出ます。この質問が出た回は、教える側としても手応えを感じる回でした。目次とページの話は、単なる豆知識ではなく、パソコンを安全に手放すための実用の知識でもあるからです。