スリープとは何か

Sleep

スリープとは ― 作業を広げたまま取る、小休止

パソコンには、電源を切る以外にもうひとつの休ませ方があります。それがスリープです。開いている文書もアプリも、机の上に広げたまま。ただパソコンだけが、うとうとと目を閉じる。これがスリープの正体です。

シャットダウンが「店じまいをして、電気をすべて消す」操作だったのに対し、スリープは「店の看板を消して、中の作業台はそのままにしておく」操作です。パソコンは、作業中の内容を電気で光っている黒板のようなもの(メモリ)に書きながら動いています。シャットダウンはその黒板ごと消してしまいますが、スリープは違います。黒板の電気だけを最小限残し、それ以外の電気を消すのです。だから、黒板の文字は消えずに残ったまま、パソコン全体は深く静かになります。

スリープの入り方と起こし方

デスクトップパソコンでスリープに入れる手順は、シャットダウンとよく似ています。

  1. スタートボタンをクリックします。
  2. 出てきたメニューの電源マークをクリックします。
  3. 「シャットダウン」ではなく「スリープ」をクリックします。

ノートパソコンなら、もっと簡単です。画面のフタを閉じるだけで、たいていの機種は自動でスリープに入ります。かばんにしまうときにいちいち操作しなくていいのは、このためです。

起こし方も難しくありません。キーボードのどれかのキーを押すか、マウスをそっと動かすだけで、黒板の電気がすっと元の明るさに戻り、さっきまでの作業がそのまま画面に現れます。それでも起きないときは、電源ボタンを短く1回だけ押してください。電源の入れ方のときと同じ理由で、長押しは禁物です。長押しは「起こす」ためのボタンではなく、「強制的に終わらせる」ための緊急ボタンだからです。

スリープ中に電源を切るとどうなる?

ここが、今日いちばん知っておいてほしいところです。スリープは「黒板の電気だけは残す」眠り方でした。ということは、その電気の供給を断てば、黒板の文字は消えてしまうということです。

デスクトップパソコンの場合、スリープ中にコンセントを抜くと、黒板の電気は根元から断たれます。開いていた文書もアプリの作業状態も、その瞬間にすべて消えてしまいます。壊れるわけではありませんが、保存していなかった内容は戻ってきません。ですから、スリープさせる前にはCtrl+Sで保存する癖をつけておくと安心です。「席を立つ前に、まず保存」。これがスリープと仲良く付き合うコツです。

ノートパソコンの場合は事情が違います。内蔵のバッテリーが黒板の電気を支え続けてくれるので、コンセントを抜いても平気です。カフェで充電コードを抜いてかばんに入れても、作業は消えません。ただし、これは「電気の蓄えがある間は」という条件つきです。何日も充電せずに放っておけば、バッテリーはやがて尽きます。そうなれば、コンセントを抜いたデスクトップと同じことが起こります。

シャットダウンとの使い分け

使い分けの目安はシンプルです。お茶をいれに席を立つ、少し電話に出る——そんな数分から数十分の小休止なら、スリープで十分です。戻ってきてすぐ続きに戻れる速さが、スリープの持ち味です。一方、今日はもう使い終わったというときは、シャットダウンで店じまいをしましょう。

「スリープのままにしておくと電気代がもったいないのでは」と気にする方もいますが、心配はいりません。スリープ中の消費電力はごくわずかで、電気代への影響は微々たるものです。むしろ、毎回シャットダウンと起動を繰り返すより、短い休憩ならスリープに任せたほうが手間もかかりません。

もっと深く ― スリープにも、いくつかの流儀があるDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。

ハイブリッドスリープ ― 黒板の内容を、こっそりノートにも書き写す

実は、多くのデスクトップパソコンのWindowsは、スリープに入るとき黒板の内容をこっそりディスク(ノート)にも書き写すという保険をかけています。これは既定で有効になっている機能です。ふだんは黒板の電気だけで十分速く目覚められるので、この書き写しの存在に気づくことはありません。ところが、もし停電などでスリープ中に本当に電気が断たれてしまっても、ノートに書き写した内容から作業を復元できることがあります。「スリープ中にコンセントを抜くと作業が消える」という原則に対する、縁の下の保険だと思ってください。ただし保険はあくまで保険です。当てにせず、席を立つ前の保存を習慣にしてください。

モダンスタンバイ ― 眠りながら起きているノートパソコン

最近のノートパソコンの多くは、モダンスタンバイという新しいタイプのスリープを採用しています。これは「深く眠っているようで、実は薄目を開けている」眠り方です。フタを閉じている間もときどき通信を行い、メールを受信したり、通知を最新の状態にしたりしています。便利な反面、副作用もあります。かばんの中に入れているのに、いつのまにか本体が温かくなっていたり、使っていないはずなのにバッテリーがけっこう減っていたりするのは、このモダンスタンバイが裏で働いているからです。「眠っているのに電池が減る」と感じたら、犯人はこれだと思って間違いありません。

なお、スリープと休止状態の違いや、シャットダウン時の高速スタートアップについては、電源オプションの設定のページで詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。

受講者
スリープって、電源を切ったのと何が違うんですか? ボタンを押したらパッと画面がつくので、あまり違いがわからなくて……。
講師講師
いい質問です。パソコンの中では、作業中の内容が電気で光っている黒板に書かれているとイメージしてください。シャットダウンはその黒板ごと消しますが、スリープは黒板の電気だけ残して他を消すんです。だからパッと戻ってこられるんですよ。
受講者
じゃあ、旅行に行くときにノートパソコンをスリープのまま置いていっても平気ですか?
講師講師
数日程度なら平気なことが多いです。でも1週間、2週間と空くならシャットダウンをおすすめします。スリープ中も少しずつバッテリーを使っているので、長く放っておくと電池が尽きて、結局コンセントを抜いたのと同じことになってしまいますから。
講師メモ ― 現場から

以前、研修先のオフィスで、休憩中にデスクトップパソコンの電源タップごとオフにされてしまい、書きかけの資料が消えてしまった方がいらっしゃいました。画面が暗かったので「もう電源は切れている」と思われたそうですが、それはスリープ中だったのです。それ以来、私は最初のスリープの説明のときに、必ず「黒板の電気だけは点いたままですよ」と付け加えるようにしています。

スリープと保存の習慣はセットで教えるようにしています。「席を立つ前に、まずCtrl+S」を口ぐせのように繰り返すと、数回の講座のうちに手が勝手に動くようになる方が多いです。習慣は、説明より繰り返しで身につく——これも現場で学んだことのひとつです。

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