ファイルの展開方法(ZIP形式)

Unzip

展開とは

メールで受け取ったり、インターネットからダウンロードしたりしたファイルが、見慣れない箱のようなアイコンになっていることがあります。それがZIPファイルです。ZIPは、複数のファイルをひとつにまとめて小さく圧縮した「袋」だとお話ししました。今日は、その袋を開けて、中身をふだん使えるファイルに戻す作業を覚えます。この作業を展開と呼びます。昔ながらの言い方では「解凍」とも言います。

イメージとしては、旅行の荷造りで使う布団圧縮袋が近いでしょう。空気を抜いてぺたんこにした袋のままでは、布団の上には寝られません。ファスナーを開けて空気を入れ、ふくらませて、はじめて使える布団に戻ります。ZIPファイルも同じで、袋のまま中を覗くことはできても、袋のままでは編集できません。展開して、普通のファイルに戻してから使う——これが基本の考え方です。

展開のしかた

展開の操作そのものは難しくありません。次の手順を覚えてしまえば、それで十分です。

  1. 展開したいZIPファイルの上で右クリックします。出てきたメニューの中から「すべて展開」をクリックします。
  2. 「展開先の選択とファイルの展開」という画面が出てきます。展開先の欄には、たいてい元のZIPファイルと同じ場所があらかじめ入力されています。特別な希望がなければ、そのままで構いません。
  3. 展開」ボタンをクリックします。少し待つと、作業が終わります。

展開が終わると、ZIPファイルと同じ場所に、ZIPファイルと同じ名前の、普通のフォルダができています。中身はすべて、そのフォルダの中に入っています。もう袋は開いているので、中のファイルを自由に開いたり、編集したり、保存したりできます。もとのZIPファイルはそのまま残りますが、展開さえ済んでいればもう出番はありませんので、必要なければごみ箱に移してしまって大丈夫です。

最大の落とし穴 ― 開けたつもりで、開けていない

ここからが、このページでいちばん伝えたいところです。ZIPファイルは、実は展開しなくてもダブルクリックで中身が見えてしまいます。フォルダのように開いて、中のExcelやWordのファイルをダブルクリックすれば、それも開きます。一見、展開した状態と何も変わらないように見えます。ここが、世界中の職場で毎日のように事故が起きている罠です。

見えているのは、袋の外から中を覗いている状態にすぎません。袋そのものは、まだ開いていないのです。この覗き見状態のまま中のファイルを開いて編集し、保存ボタンを押して安心して閉じる——すると、閉じた瞬間に、編集した内容がそっくり消えてしまうことがあります。保存はできたはずなのに、次に開くと元のまま。多くの人が「パソコンが壊れた」と思ってしまいますが、原因はパソコンの故障ではなく、展開せずに袋の中身を直接編集してしまったことにあります。

自分がいま覗き見状態なのか、ちゃんと展開した状態なのかは、エクスプローラー上部のアドレスバーを見れば分かります。道筋の中に、そのZIPファイルの名前(拡張子は.zip)が入っていれば、まだ袋の中を覗いているだけです。展開後のフォルダに入っていれば、そこにはZIPファイルの名前は出てきません。迷ったときの合言葉はひとつです。「ZIPは、開く前に、展開する」。これさえ覚えておけば、事故は防げます。

もっと深く ― 「解凍」という言葉はどこから来たのかDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。初心者の方は読み飛ばして構いません。でも、パソコン歴の長い方ほど「そうだったのか」となる話です。

「凍」の字は、どこにもない

英語では、ZIPを開く操作を unzip(ジップを外す)や extract(取り出す)と呼びます。どちらにも「凍る」という意味はまったく含まれていません。ところが日本語では、なぜか「解凍」という言葉が定着しています。これは、かつて国内のソフト文化の中で、ファイルを圧縮することを「凍結」と呼ぶ言い回しが広まり、その対義語として「解凍」が使われるようになった名残だと言われています。世界共通の技術に、日本だけの呼び名がついたまま、いまも現役で使われ続けているわけです。

パスワード付きZIPを送る文化

もうひとつ。メールにパスワード付きのZIPファイルを添付し、パスワードを別のメールで送る——通称PPAPと呼ばれるこの習慣を、職場で経験した方も多いでしょう。安全対策のつもりで長く続けられてきましたが、同じ経路(メール)でパスワードも送ってしまえば守る意味が薄いのではないか、という指摘が近年は広がり、廃止する組織も増えてきました。長年の習慣にはそれなりの理由があった一方で、見直しが進んでいる、という程度に知っておくとよいでしょう。

教室のひとこま

最後に、このテーマを教えるとき、教室で毎回のように交わされるやりとりを。

受講者
ダブルクリックしたら普通に開けたので、そのまま編集して保存したんですが……閉じたら元に戻っていて。
講師講師
それ、ものすごくよくあるんです。開けたように見えて、実は袋の外から中を覗いていただけなんですよ。展開してから編集していれば、消えなかったんです。
受講者
見た目、まったく同じなんですけど……見分け方ってあるんですか?
講師講師
あります。アドレスバーを見てください。.zip という名前が道筋に残っていたら、まだ覗いているだけです。合言葉は「ZIPは、開く前に、展開する」。これだけ覚えて帰ってください。
講師メモ ― 現場から

この事故は、パソコン教室よりもむしろ、企業研修の現場で相談される頻度が高いテーマです。「共有フォルダのZIPを開いて編集したのに、翌朝には消えていた」という報告を、何度も聞いてきました。原因を説明すると、多くの方が「壊れたと思ってパソコンのせいにしていた」とおっしゃいます。パソコンは悪くなかった、というだけで、表情がふっと和らぐ瞬間です。

教室では「覗き見状態」という言葉を使うようにしています。「開いている」という日本語があいまいで、袋を開けたのか、袋の外から中を見ただけなのかを、無意識に混同してしまうからです。言葉を分けて教えるだけで、事故の説明にかかる時間がぐっと短くなりました。

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