社会保障給付費138兆円

Social Security Benefits

ここまで、年金の仕組み、現役世代と高齢者の関係、医療費と介護費を、それぞれ個別に見てきました。ここで一度、社会保障全体をひとつの金額として眺めてみます。年金・医療・介護・子育て支援などを合計すると、1年間にいくら動いているのでしょうか。

給付費の全体像 ― 1年間で138兆円

2024年度の社会保障給付費(年金・医療・介護・子育て支援などとして、社会保障の仕組みを通じて実際に給付された金額の合計)は、138兆円でした(厚生労働省・財務省資料)。内訳を見ると、年金が最も大きな割合を占めています。

内訳金額割合
年金61.7兆円およそ45%
医療42.8兆円およそ31%
福祉その他33.4兆円およそ24%
合計138兆円100%

出典: 厚生労働省・財務省資料(2024年度)。割合は各項目を合計に対する比率としてこのページで算出。

年金制度の基本で見た年金と、医療費と介護費で見た医療は、この138兆円のうち合わせておよそ4分の3を占めています。「福祉その他」には、介護や子育て支援、生活保護なども含まれます。この金額は年々増える傾向にあり、2026年度は予算ベースでおよそ144.1兆円が見込まれています(政府資料)。

財源はどこから ― 保険料6割、公費4割

138兆円もの給付は、どこから出ているのでしょうか。財源の内訳を見ると、私たちが給料や事業収入から払う保険料がおよそ6割、国や地方の税金などの公費がおよそ4割を占めています(厚生労働省)。

公費の元をたどると、税金だけでは足りない部分は国債という借金でも補われています。政府の収入と支出で見たとおり、国の一般会計の歳出のうち社会保障関係費が占める割合はおよそ56%にのぼります(財務省)。歳出が足りない分をどう埋めているかは、国債とは何かで見た国債の仕組みとつながっています。

財源割合
保険料およそ6割
公費(国・地方の税金等)およそ4割

「社会保障は税金でまかなわれている」というイメージを持つ人も多いですが、実際にはより大きな部分を保険料が占めています。給与明細から天引きされている保険料が、この138兆円の土台を支えているのです。

少子高齢化で何が起きるか ― 給付は増え、支え手は減る

現役世代と高齢者で見たとおり、高齢化率はすでに29.4%に達しています。給付費が年金・医療・介護を中心に構成されていることを踏まえると、高齢化が進むほど、社会保障給付費の総額はさらに大きくなりやすいという構造が見えてきます。

一方で、この給付を支える保険料を払う現役世代の数は、少子化によって減っていく見通しです。給付は増える方向、支え手は減る方向という、2つの流れが同時に進んでいます。138兆円という金額は、この2つの流れがぶつかり合った現在地を映し出す数字だといえます。

この構図をどう受け止めるかは、給付の水準を見直すのか、保険料や税金の負担を増やすのか、それとも経済全体を成長させて分母を大きくするのか、いくつもの選択肢が組み合わさって決まっていきます。特定の答えを急ぐ前に、まずはこの数字の成り立ちを正しく理解しておくことが出発点になります。

もっと深く ― GDPと並べて見るDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

138兆円は、日本経済のどれくらいの規模か

138兆円と言われても、金額が大きすぎて実感が湧きにくいかもしれません。そこで、日本経済全体の生産額である名目GDP(1年間に国内で新たに生み出された、モノやサービスの価値の合計)と並べてみます。

日本の名目GDPはおよそ670兆円です(内閣府)。これと138兆円という給付費を比べると、およそ2割強にあたります。言い換えれば、日本経済が1年間に生み出す価値のうち、5分の1以上が、社会保障という仕組みを通じて誰かから誰かへと動いている計算になります。

社会保障は、経済の外側にある特別な制度ではありません。GDPと並べてみると、日本経済のかなりの部分を占める、経済そのものの一部だということが見えてきます。

考えてみるTHINK
Q1

「給付を減らす」「負担を増やす」「経済を成長させる」。3つの選択肢を、あなたならどう組み合わせるべきだと思いますか?

ヒント: どれか1つだけで解決しようとすると、何が起きるかを考えてみましょう。

Q2

自分は今後の人生で、社会保障の「払う側」と「受け取る側」を、どのように行き来しそうでしょうか?

ヒント: 今払っている保険料と、将来受け取るであろう年金・医療・介護の給付を、時間軸で並べてみましょう。

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